3月上旬に東京港区で開かれた「アトツギ甲子園」の決勝大会には、地方大会を勝ち抜いた15人が家業の新しいビジネスプランを発表した。参加資格は39歳以下の後継者で、当時中学3年生の姫井美桜さんは史上最年少で出場した。廃棄される布をなくしたいと考えたのは中学校で行われている課題研究がきっかけで、美桜さんは父の経営する会社について調べた。美桜さんの父は140年以上続く染色加工会社を経営しており、年間約1000万平方メートルの生地を染め、国内外へ出荷している。染め斑や傷があるものは出荷できず、廃棄される。捨てられる布をなくすために会社は、新素材を開発した。廃棄される布など数百枚重ね、ブロック状にしたものをプレスし薄く削り出し、一つとして同じ模様のない新素材として生き返らせた。現在環境に優しい素材としてインテリアやファッション、商業施設の飾りなどに採用されている。企業間での取引が多く、広く知られていない。美桜さんは認知度を広めるため、新素材を使った製品を3種類開発した。デザインは美桜さんが考え、鞄工房に持ち込んだ。何度も改良するなどの取り組みの中で、将来的に家業を継ぐ意識が芽生えた。「アトツギ甲子園」では入賞はならなかったが、美桜さんは将来の目標が見えてきたという。美桜さんは4月から高校生となり、新素材の製品の開発が事業として成り立つよう取り組みたいとしている。