台東区にある万年筆の制作会社では完全オーダー製で、筆圧や文字を書く速度に合わせて万年筆の調整を行っている。この工房では、ボディとペン先を組み合わせて出荷していたが、能登半島地震以降、ボディの生産が滞っている。輪島塗の事業所は約400あったが、その殆どで作業再開の目処が立たず、技術をどう繋いでいくかが課題となっている。そこで台東区の工房では輪島市から職人を呼び寄せた。屋上にあった休憩室を作業場に作り変え、先月上旬から必要不可欠な道具を運び込んだ。川口さんは先月19日から東京に移り住み仕事に専念している。塗りでは万年筆のボディに、漆の厚みにムラがでないよう15~20分塗り重ねていく。しかし塗りには課題があり、塗り終えた後に漆が下に垂れてムラができてしまう。輪島にはそれを防ぐ専用の道具があったが、東京にはないため、”回転風呂”と呼ばれるものを川口さんが自作したという。モーターで15分毎に180度回転させることで、漆の厚みを一定に保つことができる。川口さんは乾燥用の木箱も自作した。研ぎの作業ではサンドペーパーで擦ってゴミやホコリを払い凹凸をなくしていく。この「塗る」「乾かす」「研ぐ」の工程を複数回繰り返すという。万年筆メーカーの社長は「輪島と私達は一体。これからも強く支えていく」などと話した。