5年前、目の下のしわをとろうと美容クリニックで脂肪注入の施術を受けた50代の女性は、後遺症で目の下が膨れ上がった。こうした人たちが全国各地から訪れているのが、日本医科大学付属病院にある美容後遺症外来。5年前は患者は1日5人ほどだったが、近年の美容医療の広がりとともに現在は多い日で1日30人以上と急増している。しわを目立ちにくくしようとヒアルロン酸注射を受けた50代の女性。術後に感染症やほおの変形があった。日本医科大学付属病院で美容後遺症外来を担当する朝日林太郎医師は、“施術した医療機関がトラブルに対応する治療をせず、自分で検索するなどして外来を訪れるケースも多い”と指摘している。厚生労働省が美容医療を行う医療機関を対象にことし行った調査では、54.4%が専門医の資格や経験年数などの要件を設けておらず、35.7%は後遺症などが発生した場合、連携している医療機関がないと回答した。またトラブルの相談も相次いでいて、全国の消費生活センターなどに昨年度寄せられた相談件数は5年間で3倍以上に増加している。厚生労働省の検討会はきのう、美容医療の課題や対策について報告書を取りまとめた。医療機関は問題が起きた場合に、患者が相談できる連絡先などを年に1回程度都道府県などに報告し、行政側は連絡先の公表を検討することが必要だとしている。さらに関係する学会で問題発生時の対応などを盛り込んだガイドラインを策定するべきだとした。美容手術による後遺症に対応している医師は、美容医療を求める人にも注意を呼びかけている。