第三者の精子や卵子の提供で生まれた子どもの出自を知る権利に関わる法案が国会に提出されたが、審議入りすることなく、あす閉会を迎える。長年、法制化が望まれてきた一方で、見直しを求める声も大きかった法案。当事者の思いを取材した。アオイさん(仮名)は、父親が無精子症で第三者からの精子提供で生まれ、中学3年生でその事実を母親から知らされた。日本では第三者の精子提供による人工授精は、1948年に慶応大学病院で初めて実施され、これまで1万人以上が生まれたとされている。現在はいくつかの医療機関で実施されているものの、ほとんどの提供が匿名で行われてきた背景があり、親も生まれた子どもも提供者を知ることはできない。第三者の精子や卵子提供で生まれた子どもの出自を知る権利を巡っては、厚労省の専門家の部会が20年以上前に法整備の必要性を指摘したものの、事実上放置されてきた。ことし2月、与野党4会派が議論をまとめ法案を提出。ところが、内容が不十分と見直しを求める声が相次いだ。アオイさん(仮名)は「自分がどんな人間から生まれてきたか、本当にそれだけ知りたい」などと話す。