国際部記者・高橋歩唯が解説する。台湾・台北の商業施設を取材したところ、男性用個室は「4」、女性用個室は「15」と女性用がはるかに多かった。台北駅の地下鉄構内を取材したところ、女性の個室は男性の個室の約5倍設置されていた。女性用個室が多い背景には、2006年に改正された建築基準に関する法律があった。最低限設置しなければならないトイレの個室の数が女性用は男性用の3倍から5倍ほどに定められている。その数は男女のトイレにかかる時間の差などを根拠に設定された。なぜこうした法律が生まれたのか、この法律を監督する部門の担当者、内政部国土管理署・陳威成建築管理組長に話を聞いた。陳さんは「これは台湾の男女平等の考え方によるもの。生活や仕事において重要なこと。公共トイレの割合の調整が求められる」とコメント。背景にあったのは台湾の人たちのジェンダーに関する意識の変化だった。1990年代に民主化運動が活発になるとともに男女の平等を目指す社会づくりが進められてきた台湾は、女性議員の割合が増えるなど女性の社会進出が進んできた。そうした中、女性だけがトイレに並ぶのは“平等ではない”と考え、法整備が進められた。20年以上に渡り公共施設や商業施設の設計を手掛けてきた建築士の李訓中さんは、施設の設計にあたってはまずトイレのスペースの確保を優先している。さらに人の流れや上下水道の流れを考慮し、必要だと判断された場合は定められた数よりも多く設置することもあるという。
