小児がんの患者数は年間2000人〜2500人。医療の進歩により多くの命が助かるようになった。しかし成長過程の子どもの体に放射線や抗がん剤などの治療を行うことで、ホルモンの分泌異常や認知機能障害など「晩期合併症」を引き起こしている。中学3年生で鼻咽頭がんを患った水橋さんのケースを紹介。抗がん剤や放射線治療により腫瘍は縮小したが、晩期合併症により腎臓の機能が急激に低下し腎臓移植余儀なくされた。さらに聴力も低下し中等度の難聴と診断された。晩期合併症はいつ・どんな症状で現れるのか分かっていない。がんの治療から10年20年後に発症することもある。名古屋大学医師などで作る研究グループが国内初の大規模調査を行い結果を発表した。小児がんと診断された約1万7000人の医療情報を分析。約6割が晩期合併症を発症していたことがわかった。さらに約3割は症状を複数抱えていた。晩期合併症の症状としてはホルモンの分泌異常、低身長、認知機能の障害、聴力の低下など多岐に渡っていた。名古屋大学医学部附属病院・片岡伸介医師は「日本の実態に即した情報が届けられるようになり、今後の治療を終えた後のフォローアップにも役立つのではないか」などと話す。小児がんの治療後の不安に向き合い支えていこうという動きも始まっている。国立成育医療研究センターでは小児がん経験者の情報を集め、解析してガイドラインを作成し、医療機関での診療や長期的な支援体制づくりに役立てたいとしている。加藤実穂医長は「全国統一した情報を収集する体制がこれまではなかった。今やっと動き始めようとしている」などと話す。