農家などが自宅で手作りした漬物は、これまで直売所などで販売され親しまれてきたが、衛生面の基準が厳しくなったことで出荷をやめる人が増えている。地域の味を守ろうという取り組みを取材した。福島県大玉村の農家・佐藤喜恵子さんは、自宅の納屋でおよそ20年、梅干しを作り続けてきた。年間150キロほどを地元の直売所で販売してきたが、食品衛生法の改正でことし6月から、漬物の製造・販売は、個人が行う場合でも保健所の許可が必要になった。漬物を作る場所を外の環境と隔て、より衛生的にすることに加え、手を洗う場所と加工する場所を分けるため洗い場を2つ設置することなど、求められる基準は30項目以上ある。佐藤さんの場合、改修には少なくとも100万円以上かかるということで、続けるのを断念した。佐藤さんが梅干しを出荷していた地元の直売所でも出荷をやめる人が相次ぎ、17人のうち残ったのは3人だけ。店長の矢吹吉信さんは危機感を募らせ、対策に乗り出した。矢吹さんはまず村に掛け合って、製造施設の改修に20万円分の補助を出してもらうことができた。新たに必要になる保健所との事務手続きも、直売所がすべて代行することにした。こうしたサポートで、新たな3人が漬物の販売を続けることを決めた。その一人、押山和子さん。村の補助を利用して納屋の中に漬物専用のプレハブを置き、衛生的な環境を整備。洗い場などの基準をクリアして、許可をもらうことができた。手作りの漬物を守るための取り組みはほかにもある。全国各地の取り組み:自治体などが“共同加工場”を整備(秋田)、生産者のレシピを「道の駅」が受け継いで製造・販売(島根)、クラウドファンディングで設備の改修の資金を集める(和歌山、神奈川、愛知など)。