米国・トランプ次期大統領が1時間以上にわたって会見を行った。その中で、他国の主権を脅かしかねない発言が相次いだ。グリーンランドについて、米国が所有すべきだと主張したほか、カナダを合併するなどと言及。波紋を広げている。米国・フロリダ州の自宅で記者会見を行ったトランプ次期大統領は、以前から主張していたデンマークの自治領、グリーンランドについて米国が所有すべきだという考えを改めて示し、「国家の安全保障上、グリーンランドが必要。自由主義の世界を守るためだ」と述べた。米国大陸とヨーロッパの間に位置するグリーンランド。世界最大の島といわれ、面積は日本の5.7倍。ロシアにも近く、米国は、戦略的に重要な場所と見ている。すでにミサイルの早期警戒などの任務に当たる米国軍の基地が置かれている。レアアースなどの地下資源も豊富で、中国が近年開発を進めている。トランプ次期大統領は「中国やロシアの船がそこらじゅうにいるのが分かる。そんなことはさせない」と述べた上で、デンマークに対し、抵抗するのであれば、輸入製品に高い関税を課す可能性にも言及した。デンマーク・フレデリクセン首相はトランプ次期大統領の会見に先立ち「グリーンランドの住民を尊重してほしい。グリーンランドは売り物ではない」と強調していた。そして、パナマ政府が管理運営する海上輸送の要衝・パナマ運河について、米国・トランプ次期大統領は「米国にとって極めて重要だが、中国によって運営されている。米国はパナマに運河を譲った。中国にではない」と述べた。パナマ運河についてトランプ次期大統領は、以前にも米国海軍や民間の船舶に対する通航料が高すぎると不満を示していて、今回も中国が運営しているとの一方的な主張を展開。パナマは「中国に支配はされていない」と否定。パナマ・マルティネスアチャ外相も「運河の主権に交渉の余地はない。運河はパナマ人のもので、これからもそうあり続ける」と反論。会見では、グリーンランドやパナマ運河について、軍事力や経済的な圧力を使ってでも獲得を目指す可能性があるのか問われる場面もあった。米国・トランプ次期大統領は「いいえ。パナマ、グリーンランドについて(軍事力、経済力を)使わないとは保証しない」と述べた。一方で、以前からトランプ次期大統領が「米国の51番目の州」とやゆしてきた隣国のカナダについては「(カナダ併合にも軍事力を検討しているのか?)いや経済力でだ」と述べた。会見後、トランプ氏は自身のSNSに、米国とカナダを一体化して合衆国と加工した地図を投稿。カナダ・トルドー首相はすぐにSNSで「カナダが米国の一部になる可能性はゼロだ」と投稿。国連の報道官も「国連憲章はすべての加盟国が他国の領土保全を尊重する必要性を明確に定めている」と懸念を示した。トランプ次期大統領は、軍事的な圧力も否定しなかった。交渉術の1つなのかもしれないが、軍事大国のトップになる人物の発言だけに、懸念が強まりそう。
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