黒部ダム伝説の難工事(1)「わずか80m進むのに7か月!日本土木史に残るトンネル工事」。2交代制で24時間工事を行い、日本記録を塗り替えるスピードで進んでいたが、1700m掘り進んだ地点で大量の水と土砂が噴き出す異変が起きた。破砕帯と呼ばれる軟弱な層にあたり、地下水が最大で毎秒660リットルも噴き出した。作業員は冷たい地下水を浴びながら、トンネルの両側に水抜き用の穴を掘り、薬液とセメントを注入し地盤を固めて掘り進んだが、工事は想定外の大幅な遅れとなった。冬になるとマイナス20度を記録したが、厳しい寒さで地下水が減少する奇跡が起き、破砕帯を突破し、その3か月後にトンネルが貫通した。トンネルは全長5.4kmだったが、わずか80mの破砕帯を抜けるのに7か月かかり、全体の工事も7か月遅れてしまった。