今回は住宅メーカーと大学が組んで大阪・関西万博のパビリオンで披露する準備が進められている、人工光合成を使い家庭のエネルギーを作り出す技術があり開幕前の万博会場で取材。10月13日までの半年間開かれる大阪・関西万博。会場のシンボルで世界最大級の木造の構造物でもある大屋根リングの外側に真っ赤な屋根が特徴の飯田グループホールディングスのパビリオンがある。パビリオンはまだ準備中となっているが、未来の家と街をイメージし提案している。施設内には2050年の水素社会を実現した未来都市をイメージした大きなジオラマが来場者を迎えている。街のコンセプトは“人工光合成”。展示では息を吹きかけると光合成を説明してくれるコーナーもある。自然界の光合成は植物が太陽の光をうけると二酸化炭素や水を取り組み酸素やデンプンなどを作り出すもの。一方、今回開発中の人工光合成では太陽光エネルギーを利用し水と二酸化炭素から蟻酸と呼ばれる化合物を生み出す。その蟻酸を必要な時に分解し水素を取り出し活用する取り組みをしているという。飯田グループでは実際に作り出した水素でパビリオン内にあるジオラマの一部の明かりを発電しようと考えている。この人工光合成を共同で研究開発しているのが大阪公立大学。研究センターでは光合成パネルでエネルギーをあつめ、葉緑体の役割となるギ酸生成セルにおくられ、水素と二酸化炭素に分解し水素で発電する研究が行われていた。発電はできるが、大量の水素を発電し貯蔵する必要があるが、蟻酸は少量からでも多くの水素をつくれる特徴があり、一般家庭電気を1日分まかなうためには通常住宅よりも大きな水素タンク24基が必要となるが蟻酸の場合は2kgに圧縮できるという。さらに濃度を薄めると火もつかず危険物にもならないため貯蔵に優れているという。コンパクトな人工光合成の装置を住宅に取り付けることで水素社会の実現が夢から現実のものとなる可能性がある。飯田グループホールディングスの西野社長は、人工光合成について日本の国家的課題はエネルギー受給。この課題に向き合いたいと考えているという。この万博終了後は、沖縄・宮古島で実証の場を移し研究開発を加速、10年以内の商品化を目指しているという。国内の住宅マーケットは縮小しているとされているが、自立型のエネルギー住宅に関してはこれからのマーケットだとみている。