その人が目指しているのは新宿の南口にいるというある少年の元。顔は知らない。初対面での待ち合わせは手のもの。この日は愛知県から家出をしてきたという10代の少年を迎えにきた。家出人を連れて案内したのはオカさんが経営するシェアハウス。通称・駒込ハウスは家賃1カ月3万4000円。ここにいる多くが家出人。未成年の場合は保護者の同意が必要。オカさんが3作ったのは今助けてほしい人のためのシェアハウス。都内近郊に10か所ある。様々な事情を抱えた人がやってくる。運営するのはオカさん1人でひっきりなしに連絡が入る。不安でいっぱいの入居希望者のためオカさんの対応は即レスが基本。オカさんは1977年生まれ、東京・勝どき出身、父は会社員では母幼稚園の先生。人付き合いが苦手で株式投資、トラック運転手などをした。そんな時に知ったのが家出人向けのシェアハウス。オカさんはよく10か所あるシェアハウスを訪ねてまわる。訳あり人生と付き合うのも、味方だとういメッセージ。社会でうまくやっていくコツを教えるのも親心から。この日は真夜中に少年たちと住民税の取り方を教えにむかった。この日はアルバイトをはじめるある入居者の身元引受け人にもなった。27歳のくまさんは慶応大学法学部を卒業後、銀行に就職したが、馴染めずに家出をしてシェアハウスに入居した。エリートだったくまさんは家出することでしか自由になれなかった。今は喫茶店でアルバイトをしている。収入は激減したが、悩みから解放されて幸せだという。くまさんの場合はそこかしこに隠しきれない教養がある。喫茶店の次はカラオケ店で朝までバイト。
シェアハウスに住む22歳のハマちゃんは大阪から家出してきた。ハマちゃんは2000年、大阪生まれ、3人きょうだいの長男、父親は整骨院を経営。中学時代にグレはじめて、高校を卒業すると家出をし、ホストや建築現場などで働いた後に上京した。2020年にオカさんのシェアハウスに入居した。以来、出たり入ったりを続けている。今はビルの清掃をしている。週払いの給料日、約4万3000円ほどを受け取る。この日は家賃の支払い日でもあった。しかし、オカさんが回収にくるとハマちゃんはすでに使ってしまい、2万円しか支払いができずにいた。ハマちゃんは別件の支払いがあり、家賃がたりなかった。そんなときに助けてくれるのは大阪にいる接骨院を営む父親。唯一ハマちゃんを心配してオカさんにお金を送り続けてきた。しかし、ハマちゃんからの連絡は無し。
2020年の開業以来、450人以上が入居してきたシェアハウス。オカさんには印象に残っている入居者がいる。その人に会いたいと連絡すると快く受け入れてくれた。25歳の遠藤李孔さんは19歳のときに傷害事件を起こしてオカさんの元にやってきた。建設現場の仕事を必死でして4カ月で自立。今でもその仕事を続けている。変われる人もいれはそうでない人もいる。この日、ハマちゃんは清掃業を仲介してくれた山田さんから飲みに誘われていたが、仕事をしないハマちゃんを注意するために開いた飲み会だったがハマちゃんは現れなかった。駒込ハウスを除いてみるとハマちゃんは帰っきていない。