1000年以上にわたり岩手県・奥州市の黒石寺で開かれてきた蘇民祭。ふんどし姿の男たちが五穀豊穣や無病息災を願う由緒正しい祭だ。2008年、祭のポスターが不快感を与えかねないとして、JRが駅への掲示を断ったことで取材が殺到。一躍全国に知れ渡ったが、いまこの祭に思わぬ事態が起きている。祭の準備や儀式などを執り行う住民の高齢化と将来の担い手不足により、続けていくのが困難な状況になったという。番組が出会ったのは2009年から15年間祭に参加してきたという地元のチーム。リーダーから一緒に回ろうと提案された。最後の蘇民祭が始まった。邪気を正す掛け声とともに参加した約270人の男たちが向かったのは黒石寺の前を流れる川。ここで水をかぶり身を清める。その後境内を一周し、また水をかぶるという祈願を3度繰り返す。ここで例年にないできごとが。今年は最後の祭とあって参加者が多く、境内を巡る列が長く待ち時間が発生。気温4℃のなか寒さに耐え忍ぶ。例年は午後10時ごろから夜明けまで様々な行事を行っているが、今年は午後6時から11時までの5時間に短縮。これもスタッフの高齢化や担い手不足の影響だという。そして祭のクライマックスとなるのが「蘇民袋」の争奪戦。凄まじい熱気のなか開始から約30分、争奪戦は本堂から境内へと移る。取材スタッフが注意喚起の声に従いながら撮影していたそのとき、激しいもみ合いから倒れ込む参加者もいた。幸いけが人はなく開始から約1時間後、争奪戦に決着が付いた。最後に「蘇民袋」を握り“取主”となったのは18歳から祭に参加していた菊地敏明さん(49)。