60代・高原純一さんの台所物語。純一さんは大学でマーケティングを教えている。キッチンはコンパクトにまとめ、効率的に。一番好きなのは鍋。料理は大好きだという。20年間過ごした台所には、封じてきた記憶がある。純一さんは毎日妻と台所に立つ。鍋に火をかけて煮込む間、妻と2人で乾杯するのが私服の角打ちタイム。かつて、純一さんにとって台所は苦痛でしかなかった。前妻をがんで亡くし、初めて立つ台所で、1人で娘を食べさせていくことになった。長時間労働が当間の時代、必死だった。当時は仕事が終わって料理を作って食べさせ、またクライアントのところへ行き、電車に乗っている間の走らない時間が幸せだった。20年経った今も、娘への罪悪感は拭えない。普通だったら子どもに持たせられるものを与えられていなかったと感じている。娘は、父があまりにも大変だったのを見ていたが、その頃がすごく楽しかったと思っていると明かす。週末は2人でスーパーへ行き買い物したこと、小林カツ代のレシピ本のオムレツが好きだったことを話した。最近になって娘から当時が楽しかったと聞いて、純一さんは20年の封印を解いてオムレツを作れるようになった。