島根県浜田市にある水族館「しまね海洋館アクアス」で、母親をなくしたシロイルカの子どもが飼育員たちの手で育てられている。子どものシロイルカを人の手で育てる事例は少なく、現場では日々、試行錯誤が続いている。飼育員たちからは母親のイルカ「アーリャ」にちなんで「アーリャ子」と呼ばれている。母親はアーリャ子を出産した10日後、病気で死んでしまった。残されたアーリャ子を、飼育員たちが母親代わりとなって育てるために欠かせないものは、様々な道具。母親からミルクがもらえなくなってしまったアーリャ子のために、準備したものは注射器と細長い管だった。口の中に差し込み特製の人工ミルクを飲ませた。アーリャ子の成長に合わせてミルクを飲ませる道具も進化。生まれてから4か月が過ぎた頃、特別なほ乳瓶を作った。管の先端の角をヤスリで細かく削って丸くし、口の中が傷つかないようにしている。たくさんミルクを飲んで今年2月にミルクを卒業する頃には、体重は約118キロになった。手作りのほ乳瓶がアーリャ子の成長を支えた。アーリャ子のためのおもちゃは、漁業で使う浮きや水道ホースなど、身近にあるものが材料。気を付けているのが絶対に壊れないこと。部品がバラバラになると飲み込む危険があるため。誤飲する可能性がないか、獣医師のチェックを受けて完成。これまで1頭だけで育てられてきたアーリャ子。他のシロイルカが暮らす水槽につながる水門を開けることになった。群れで生活するシロイルカ本来の環境に近づけるため。その第1段階は格子ごしの顔合わせ。ここでも飼育員が手作りの道具で支える。園芸や土木工事に使われるネットで、アーリャ子の体が傷つかないよう小さなバリも見逃さない。格子に顔が挟まったり、はみ出た体を大人のイルカが噛んだりしないように、目の細かいネットをはって安全に体面させる。飼育員たちが作り出す様々な道具が、きょうもアーリャ子の成長を支えている。
住所: 島根県浜田市久代町1117-2
URL: http://www.aquas.or.jp/
URL: http://www.aquas.or.jp/