労働団体の連合は今日、来年の春闘に向けた方針を正式に決定した。ベースアップ相当分3%以上と定期昇給分を合わせた5%以上の賃上げを要求するとしている。賃上げを実現するためいま企業に何が求められているか。経済同友会の新浪代表幹事が社長を務めるサントリーでは、2年連続となる7%程度の賃上げの実施に向けて労組との交渉に入る方針を決めている。継続的な賃上げの実現につなげるため進めているのがAIの活用による生産性の向上。商品のラベルの文字の校正にAIを活用することで、人の作業時間を大幅に減らすことに成功した企業もある。また、「新商品の開発」と「作業の効率化」で持続的な賃上げを実現する企業もある。AIを駆使した産業用ロボットを開発しているとある大手メーカーの営業利益は過去最高となった。また、同企業は自社工場内でもAIロボットを活用し、人とロボットが得意な作業を効率的に分担することで1人あたりの生産性を向上させている。同企業はことしの春闘ではベースアップ相当分として過去最大の月額7,000円の賃上げを行った。専門家は、生産性の工場を「効率化」に留めず、「企業の稼ぐ力」につなげることが重要で、そのためにも「賃上げ」が重要であるとも指摘している。良いものを作るためには良い工場や設備、人材が必要だが、賃上げを行わないと良い人材が集まらない状況になっているため。経営者の間でもこうした考え方が浸透し始めている。賃上げの機運は中小企業でも高まりつつある。福岡県にある社員20人の企業が運営する海鮮料理店では、顧客データ管理が長年の課題だった。ノートなどアナログな管理を長年行ってきたが、3年前からはIT企業と連携し、専用のシステムを導入した。過去のデータから仕入れの量を予測し、食材のロスがほぼなくなった。デジタル化で経営に余裕が出てきたため、去年はテイクアウト専門店を新たにオープンした。コロナ禍前と比べて会社全体の利益は5倍に伸び、ことし2月には平均5%の賃上げを行った。連合の芳野会長は、「労務費を含めた価格転嫁をどのくらいできるのかが非常に重要」とも話している。