キャリアと育児の両立を目指し取り組んできた企業がある。都内に本社がある大手飲料メーカー。育児中の社員が転勤を回避できる制度や育休後の一定期間人事評価が下がらないよう保障する制度などを導入してきた。中でも挑戦的な取り組みとして始めたのが早回しのキャリア形成。産休や育休を取得した女性社員は男性社員との間に大きなキャリアの差が生まれていた。そこで希望した女性社員に早いうちから高度な内容の業務を経験してもらい、産休や育休を取ったあとも昇進に影響が出ないようにした。入社6年目の木村弥由さん。新卒で入社後、地方で営業を経験し、去年から本社の経営企画の部署で働いている。若手ながら日頃から役員と議論し、経営戦略の策定などを行う役割を担っている。制度を導入したことでこの会社では女性の管理職が大幅に増えた。2人の子どもを出産し、育児をしながら都内の支店で支店長を務めている人もいる。チャイルドペナルティー解消に向けた取り組みはほかにもある。鉄道会社(JR東海)ではことしから育休を取得した社員の昇格の条件を緩和。これまでは職位ごとに一定の勤続年数が必要だったが、育休中もその期間に含むことにした。また男性の育児参加を促す取り組みもある。千葉銀行では、男性行員に対して育児セミナーの参加を促すほか、育休を取得する際に夜間授乳、子どもと留守番など30項目ほどの目標を示してその成果を報告してもらっている。こうした取り組みの広がりが重要で専門家、早稲田大学・大湾秀雄教授は「労働力不足の中、女性が能力を発揮しづらい職場は優秀な人材を獲得できず、イノベーションが生まれにくい。企業は危機感を強く持つべきだ」として働き方への見直しが進むよう経営層の意識改革や国の後押しが必要だとしている。