東日本大震災で大洗町には4メートル超の津波が押し寄せ、町の約1割が浸水した。県は大洗町の漁港や商業施設が集中するエリアの復旧・復興工事を計画し、その中で有力としたのが漁港と商業施設の間に4.5メートルの防潮堤を整備する案だった。これに待ったをかけたのが漁業関係者で、港と町が分断されて漁港の利便性が低下するうえ、商業施設からの眺望に深刻な影響が出ると懸念したそう。こうした意見を受けて県は計画の見直しに踏み切り、今回計画した防潮堤の代わりに元々海側にあった防潮堤をかさ上げし、漁港の入口に水門を造ることで地元との合意に至った。一方大洗町では復興事業から外れた地区もある。ホテルや旅館などが立ち並ぶ宮下地区にある神磯の鳥居は多くの観光客が訪れる人気の観光スポットとなっている。この地区の防潮堤は県の復興基準のうち津波へのたかさは満たしているものの高潮に対する高さは不足していた。このため県は防潮堤を1.5メートルかさ上げする計画を地元に示した。一方町内会ではかさ上げによって海の眺望という地域の魅力を維持できなくなることや、高潮は避難などの備えが可能などと訴えた。こうしたことから県は復興事業から外し、町内会は観光客などへ注意喚起を図ることにしている。専門家によると防災となりわいのバランスが各地で課題となっているそうで、将来どんな地域を目指すかを見据えた防災対策が重要などと指摘した。