トラックドライバーの時間外労働の上限はこれまでなかったが、4月から年間で960時間に規制される。これにより”14%余の荷物が運べなくなる”という試算もある。長時間労働によって支えられてきた物流の現場を取材した。宮城県にある従業員200人の運送会社。ドライバー歴20年以上の工藤哲也さん(52)。午前10時半過ぎ、ハンドルを握る前に行うのが荷積み。重いもので1箱10kgある食品2500箱を1人で積み込む。2時間かけて荷積みを終え、午後1時40分に出発した。今回は宮城と関東の往復約900kmの運行。往復は月に9回。午後5時半、栃木県のサービスエリアに入った。国の決まりで4時間以上の連続運転ができないため。さらに届け先で荷下ろしできるのは午前0時以降。ここで時間を調整し、仮眠を3時間とる。再び走り始めたのは午後10時過ぎ。トラックの列がサービスエリアの外まで溢れていた。深夜も荷物を運び続けるトラックドライバー。しかし、その所得は全産業の平均と比べると20万円程度低くなっている。現場では時間外労働の是正は必要だと感じながらも新たな労働時間の規制で所得が減るのではないかという不安が広まっている。日付は変わり埼玉県にある届け先に到着。1人で荷物を下ろし、1日の作業が終わったのは午前2時半過ぎ。宮城に戻ったのは出発から36時間後。こうしたドライバーの負担を減らそうと工藤さんの会社では長距離運行の回数を4年前と比べて1割削減したという。社長は「どうしても労働時間が長くなってくると病気や事故が多くなってくるので労働時間の削減を今までも進めて自社の運行回数は抑えてきている。ただ、繁忙期がまだあり対策を考えざるを得ない」と話した。