知的障害のある女性と母親を40年以上にわたって撮影した映画がこのほど完成した。ともに支え合いながら生きてきた親子。作品ではともに育み育まれてきた2人の歩みが描かれている。映画「大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜」は知的障害と重いてんかんのある奈緒ちゃんの9歳から50歳までを記録したドキュメンタリー映画。映画を撮った伊勢真一監督。幼いころ医師から長くは生きられないと言われた奈緒ちゃんの記録を家族に残してあげたいと撮影を始めた。主人公である奈緒ちゃんの母、信子は監督自身の姉でもある。生まれてまもない奈緒ちゃんを襲ったのはてんかんによる激しい発作だった。当時、信子が抱いた感情は申し訳なさだった。知的障害もある奈緒ちゃんは障害のある人への理解が進んでいなかった昭和の時代に信子は子育てに奮闘する。奈緒ちゃんに友達を作ってあげたいと自宅に近所の子どもを招く。しかし奈緒ちゃんは1人で外に出て行ってしまう。また小遣いを使うときには事前に伝えるという約束を破り黙って買い物をした奈緒ちゃん。障害があるという理由で万引きを疑われることもあったため厳しく叱る。障害児の親たちとともに作業所も作り、奈緒ちゃんは31歳のとき実家を出てグループホームに入った。ことし51歳になった奈緒さんはこの日、グループホームの夏休みに合わせて自宅に帰ってきた。映画では離れていても寄り添い続ける2人の姿が描かれている。奈緒ちゃんが信子に毎日、何回もかけてくれる電話。奈緒さんはいつしか家族を支える側へと成長していた。相模原市で今月行われた上映会。訪れた人たちは奈緒さんと信子の歩みからさまざまな思いを受け取っていた。監督は信子が数年前から書き始めたエンディングノートを撮影していた。大好きな奈緒ちゃんへお母さんからのメッセージ。この温かい家族の歩みが記録されたこの映画だが、相模原市の障害者施設で19人が殺害された事件についても取り上げられている。映画を通じて命を大切にする気持ちが社会に広がってほしい。映画はあすから横浜市内の映画館で上映される。