雨が降るJR川崎駅前で傘をささずに歩いて来た男性に声をかけた。「家、ついて行ってイイですか?」とお願いすると、「人に聞いてもらいたい事があるから」とOKだった。タクシー代を支払うかわりに家までついて行った。てつやさん(55歳)は居酒屋の店員。学生時代にラグビーをやっていて、雨の日でも練習・試合があるので傘をささなくなったという。推定距離は14.3km、料金は6,770円だった。午前0時20分に帰宅。築35年の持ち家で間取りは4DK。生まれてからずっと住んでいて、今は1人になってしまったという。畳の上には督促状が散乱していた。調理道具が充実し、冷蔵庫の中も色々な食材があった。料理が好きで近所の人におすそわけしているという。2階へ上がるとプラモデルを作る部屋があった。寝室には布団もベッドもなかった。寝袋で寝るという。本がたくさんあり、「本は財産だと思ってるからね」と語った。調理師免許を持っており、様々な分野の飲食店に勤務し、小学校で給食のおじさんもやっていた。母・吉子さんも調理師免許を持っていて、お母ちゃんの鶏の唐揚げが食いたいと語った。母は2013年の大晦日に亡くなった。お風呂に入った母が出てこないので見に行ったら沈んでいた。心臓マッサージをして肋骨が折れた時の感覚が今でも手に残っていると泣きながら語った。母を助けることができなかった自分への後悔から仕事も趣味も続かなくなったが、かわいい甥っ子の存在が心を立て直してくれたという。得意のペペロンチーノをご馳走してくれた。