建設業界は深刻な人手不足が課題となっている。そんな中、神奈川県横須賀市では中小の建設会社の団体が地元の高校で1年間、実践的な授業を行う全国でも珍しい取り組みを進めている。神奈川県立横須賀工業高校の生徒たちが地元の大規模な病院の建設現場を見学していた。巨大な建造物を多くの職人の手で作り上げるだいご味を知ってもらうこの見学会は、地元の建設会社で作る団体が高校で行う授業の一環として企画した。先生役を務めるのは横須賀建設業協会に加入する会社の経営者たちだ。建設科の2年生、30人余りを対象に年間の実習の半分以上にあたる120コマを受け持つ形で去年から始めた。生徒たちは必ずしも建設業界を目指すと決めているわけではないため、授業では仕事の意義や働きやすさについて熱意を込めてアピールする。この取り組みの背景には業界としての将来への危機感がある。授業を中心的に進める建設業協会の理事・下里晃雄によると、会社によって程度に差はあるが建設業界は社員の高齢化が進み、若い人材がなかなか入ってこない現状があるという。若い人が建設業を目指すきっかけを作りたいと協会の仲間と一緒に考えた授業のカリキュラムは体験を重視した内容にした。この日、本格的な実習の授業が行われた。学校の花壇を整備し直すため実際の工事現場さながらに地面のアスファルトなどを壊していく。協会のメンバーは電動工具を使う生徒たちをつきっきりでサポート。測量の作業にも挑戦してもらった。うまくできなくても実際に建設業のプロから作業を教われることに生徒たちも楽しさを感じていた。生徒たちの表情を見て下里も手応えを感じていた。横須賀建設業協会の授業を去年受けた今の3年生からは貴重な体験ができたなどという声が相次いでおり、ほとんどの生徒が将来、建設業界で働くことを志望しているということで熱意が生徒たちにしっかりと伝わっているようだ。