今月9日に袴田巌さんの無罪が確定した。事件が起きたのは1966年。静岡県のみそ製造会社で4人が殺害され、従業員だった袴田さんが逮捕された。警察による苛烈な取り調べは連日長時間に及び、袴田さんによると暴行もあったという。袴田さんは精神的・肉体的に追い込まれ、自白を強要された。それでも裁判が始まると一貫して無罪を主張。すると検察は新たな証拠を提示する。検察は当初「袴田さんはパジャマを着て犯行に及んだ」と主張していた。しかし事件から1年以上たった後、現場近くのみそタンクから血まみれの衣類が見つかったとして、この衣類が犯行時に着ていたものだと主張。裁判の途中で証拠が変わった。弁護側はこの証拠の矛盾を指摘し続けたが聞き入れられず、死刑が確定する。しかしそれから44年後、この衣類が捜査機関によるねつ造と結論づけられたのだった。再審請求の審理に関わった熊田俊博元裁判官は「発見の経過自体がおかしい」などと話した。長年の拘禁と死刑執行の恐怖は袴田さんの心をむしばんだ。10年前に釈放された後も意思疎通が難しい状態が続いている。今回の無罪確定を受けて畝本直美検事総長は談話を発表し、判決確定までに長期間かかったことについて謝罪した一方、判決には「到底承服できない」と反発している。