紀伊山地の霊場と参詣道は世界遺産に登録されてから20年になる。熊野川は川の参詣道として知られ平安時代には三反帆に乗って上皇や貴族などが熊野詣でを行ったと伝わる。船大工の谷上嘉一さんは伝統の三反帆は昭和30年代に途絶えたが谷上さんは20年前の世界遺産登録を機に観光船として復活させた。みずから船頭を務め熊野川の歴史や文化を伝える。しかし、川舟の運営は順調ではなかった。13年前の紀伊半島を襲った豪雨では三重、和歌山、奈良の3県で死者72人。谷上さんの三反帆も壊れたり流されたりして運航を続けることが危ぶまれた。豪雨などの困難を乗り越え川の歴史や文化を伝え続ける。課題は若い世代への継承。北原潤希さんは地域おこし協力隊として埼玉県から3年前にやって来た。歴史と自然が融合した熊野川の景観に惹かれ谷上さんの下で三反帆の運営に携わっている。熊野川で川舟を作るのは谷上さん、ただ1人。谷上さんは暴れ川と呼ばれる熊野川の激しい流れに負けない舟に込められた先人の知恵を北原さんに伝える。世界遺産登録から20年を迎えた川の参詣道、熊野川。その歴史や文化は次の世代に引き継がれようとしている。