和歌山県のほぼ中央に位置する有田川町では江戸時代につくられた扇状の棚田が今も利用されている。町の8割が山林で人々は林業などで暮らしてきた。峰伸汎さんは庭で梅・山椒・しいたけを栽培している。庭の斜面にはシュロの木がある。弘法大師が中国から持ち帰ったとの言い伝えがあるという。シュロ皮の繊維は水に強く伸縮性があるため暮らしに活かされてきた。峰さんが剥いだシュロ皮は隣町に運ばれ、たわしに加工される。最近はヤシなどで作った輸入品がほとんどだが、シュロはしやなかさや肌触りの良さが特長だという。峰さんの家では今もシュロのほうきや縄を使っている。9月になるとカヤノキが実をつける。庭に落ちた実を拾い集め、皮を剥いて火を通す。アーモンドのような味わいで冬の保存食として活用されてきた。カヤの実を庭に並べるとヤマガラがやって来た。庭の片隅にはシュロの苗木が植えられている。