徳島県では炭作りに適した伝統的な林業が再び注目されている。面積のおよそ9割が森林にあたる、徳島県美波町。炭の原料に適した、堅くて重いウバメガシという木が広く生育している。この地域で300年以上続いてきたのが、樵木林業と呼ばれる林業。100年以上前の大正時代には3000軒以上が手がけていたが、今では10軒ほどに減っている。特徴は木を切る時期の早さ。幹が成長しきらない十数年で伐採して、炭に使いやすいサイズを確保する。短いサイクルで伐採を繰り返すことで、森林資源を若い状態で保つことができるという。この林業の可能性に目をつけたのが、吉田基晴さん。IT事業などを手がけてきたが、故郷にUターンして3年前に会社を立ち上げた。吉田さんの会社の備長炭の販売価格は、高いもので12キロ2万2000円。火持ちがよく、赤外線でじっくり火が通ると評判。炭作りを行ううえで課題となっていたのが膨大な手間。熟練の職人が1000度以上になる窯の温度を確認する必要があり、24時間付きっきりで行う。そこで吉田さんは、IT化を推進。窯のそばの温度をスマートフォンから遠隔で確認する仕組みを整えて、職人の負担を減らした。そうした工夫で、炭作りにかかる人件費なども抑えられるようになった。吉田さんは、熟練の技に頼らず、経験のない移住者でも働きやすい環境を作ることが重要だと考えている。