中国が日本産水産物の輸入再開の方針を示したことで、日本の水産業者からは安堵の声が聞かれた。去年8月、原発の処理水放出が始まると、中国は激しく反発。日本産水産物の輸入を全面停止した。去年11月に行われた日中首脳会談では、協議と対話で解決策を見いだすことで一致したものの、輸入再開のめどは立っていなかった。中国がこれまでの方針を転換した理由について、東京財団政策研究所・柯隆主席研究員は「中国経済の減速が影響している」と指摘した。中国経済は長引く不動産不況や内需の低迷などを背景に、先行きの不透明感が広がっている。柯隆主席研究員は「日本企業が中国から離れた場合、さらにマイナスの力がかかってしまうので、こういう段階では中国にとどまってほしいというのが、まず1つ目の願い」と説明。中国に進出している日本企業には、予想のつかない「チャイナリスク」の問題が横たわる。去年3月には「アステラス製薬」幹部の日本人男性が、中国当局によりスパイ容疑で拘束され、先月起訴されている。また相次ぐ日本人襲撃事件など、日本企業の「中国離れ」を加速させる問題ばかりが起きている。東京財団政策研究所・柯隆主席研究員は「海外への波及効果を恐らく中国政府が恐れている部分があり、処理水のことを政治のカードとして持っていたが、このタイミングで切った方がよかろうと思った。これ以上騒ぐなよと、処理水についてちょっと譲歩するから、輸入を再開するというある種のディール(取引)が見え隠れしている」と話した。