戦後80年となり被爆者など戦争体験者の高齢化が進む中、当時の記憶を語り継ぐことがますます難しくなっている。こうした中、神奈川県はAI人工知能を活用して貴重な証言を次世代に残していく取り組みを始めた。神奈川県がIT企業と協力して作ったAI語り部というシステム。まず戦争体験者に事前にインタビューして想定される質問に対する回答を撮りためておく。その蓄積した証言映像の中からAIが利用者の質問に合う適切な回答を選び出し自動で画面に流す。このAI語り部に協力したのが横浜市に住む西岡洋さん、93歳。子どものころは長崎市で暮らし13歳のとき爆心地からおよそ3.3キロの場所で被爆した。奇跡的にけがはなかったが当時直面した過酷な現実を子どもたちに語り継いでいる。去年10月に行われたAI語り部の収録で、西岡さんはみずからの戦争体験について記憶のかぎり一つ一つ答えていた。受けた質問は150以上。収録は全体で10時間以上に及んだ。こうして完成した西岡さんの思いが宿ったAI語り部。先月末に地元の小学生に体験してもらう機会が設けられた。西岡さんも会場を訪れその様子を見守った。あまりの惨状に感じる心を失ってしまった被爆直後の自分。これからもずっと戦争の記憶を子どもたちに引き継いでいけるのではないかと西岡さんの期待は膨らんでいる。