海面すれすれでホバリングするヘリ。海に飛び込んでいくのは水陸機動団の隊員たち。骨折を防ぐためにフィン、足ひれは着水後装着。東シナ海で増加する離島奪還訓練。離島とは尖閣諸島。沖合の輸送艦から島を目指す水陸両用車。海上では20人の隊員が乗り込んで時速13キロで進む。長崎・佐世保市に拠点を置く水陸機動団。陸上では時速70キロで走る水陸両用車。操縦するのはほとんどが北海道の戦車隊から異動してきた隊員。人員不足の中でも水陸機動団だけは今年1000人が増強された。南西シフトも加速。宮古海峡を通過する中国艦隊を目標として追跡するP3C。東シナ海での追跡は常態化。そんな中、中国が反発する事件が起きた。中国外務省報道官は「台湾問題は中国の主権と領土保全、日中関係の政治的基礎に関わる問題。超えてはならないレッドライン」と述べた。護衛艦「さざなみ」があえて台湾海峡を航行。自衛隊発足後、初めてのことだった。林芳正官房長官は「自衛隊の運用に関する事柄。答えは差し控える」、吉田圭秀統合幕僚長は「運用の細部に関する事柄なので、答えは差し控える」と述べた。口裏を合わせたような答えしか返ってこない。実はオペレーションは総理官邸が主導し、事前に米国にも伝えていた。元防衛省情報分析官(海将)・伊藤俊幸氏は「“中国を刺激するな”が日本政府のスタンス。もともとあそこ(台湾海峡)国際海峡で、何の文句を言われるものでもない。日本側が遠慮をして通らなかっただけ。(防衛省だけで決めたわけではなくて?)(総理)官邸でしょう」と述べた。一方、中国はICBM(大陸間弾道弾)を太平洋に向けて発射、米国をけん制した。しれつな情報戦は目に見える形で軍事力を誇示する威嚇に変化している。成蹊大学・遠藤誠治教授は「ウクライナに対するロシアの軍事侵攻以降、言葉での不満を表明するのでは足りないという感覚が広がっていて、軍隊がかかわる公道で明示的にメッセージを伝えることが多くなった」と述べた。鹿児島・馬毛島。5年間で43兆円に膨張する防衛予算は、台湾有事も想定し、主に南西諸島につぎ込まれる。防衛省が買い上げた周囲16kmの島全体が巨大な軍事基地になる。滑走路や護衛艦のふ頭、継戦能力を高めるための火薬庫や燃料施設の建設が急ピッチで進む。政府が進める反撃能力の強化は、周辺国の思惑も絡んで「軍拡競争」の様相を呈してきた。安全保障環境が劇的に変化する中、来年日本は終戦80年を迎えることになる。