北海道登別市、築47年・家賃5万円の広い台所のお宅。展示されているかのように並ぶ民芸食器が素敵。持ち主・新村のりこさん。2年前から初めてのひとり暮らし。のりこさんにとって台所は自分の足で立っていると感じられる場所。2年前から夫を札幌に残して単身赴任中。登別市で地元の魅力を発信する“地域おこし協力隊”に採用された。仕事を通して沢山の人達と出会ってきた。それが台所に詰め込まれているという。こけしはアイヌの工芸作家と仕事した時に「素晴らしいですね」という話をしたら何ヶ月後かに届いたそう。番付表は東京出張の時に出会った新入りのお相撲さんが送ってくれたもの。食器はのりこさんが企画したイベントなどを通して出会った陶芸作家たちの作品。以前は自分の仕事に自信が持てず模索を続ける日々だった。最初に仕事に就いたのは23歳。事務職だったが、ミスばっかりしており、先輩から”チョンボマン”というあだ名を付けられたという。その後、デザイン会社を経て、雑貨などの販売イベントを企画・運営。大手バイヤーと地元・北海道の作家を結びつける中でやりがいを見つけた。しかし、イベント運営の仕事は収入が低く、赤字になることも。かつての取引先に「趣味じゃん」と言われた。夫とは12年前に結婚。仕事は続けていたが、夫の収入に頼る暮らしにコンプレックスを感じてきたという。当時は夫の社宅で2人くらし。洗面所も脱衣所も兼ねた暗くて狭い台所で夫の帰宅時間に合わせて夕飯づくりの日々を送っていた。そんな時に見つけたのが登別の魅力を発信する地域おこし協力隊の募集。採用が決まり、「ひとりで暮らしたい」と切り出したところ、最初は戸惑っていた夫も応援してくれた。仕事が忙しい時は台所でご飯をかきこむことも多いが、自分の働いたお金で部屋を借りて食べていることが嬉しいという。今の仕事の任期は来年の春まで。ひとりで過ごす時間は人生のボーナスタイムだという。のりこさんは「別に「終わらないでほしい」とも思ってない。今だけのご褒美みたいな感じだからすごい楽しんでいられる」と話した。最近になって札幌で暮らす夫がこの町に転勤の希望を出したそう。