4月中旬、都内の病院は未知のウイルスにそれぞれの工夫で立ち向かっていた。聖路加国際病院の看護部長の鈴木千晴は患者とのコミュニケーションが少しでもうまくいくように、看護師たちは表情が分かる写真を貼り付けていた。東京医科歯科大学病院でも手探りで治療にあたっていた。そんな中、思い呼吸不全などに使われていた高度な機器「エクモ」を導入しようという声が上がった。エクモは血液を取り出し酸素を入れて体に送り返す肺の代わりになる装置。大きな効果がある最後の砦。しかし海外ではエクモを使った場合の救命率はわずか6割と言われていた。このリスクの高い治療を誰がやるのか。その時、立ち上がったのが荒井裕国だった。荒井は共にエクモを操作する相棒・倉島直樹を連れてきた。2人が出会ったのは北信総合病院だった。4月24日、植木の元にある患者の受け入れ要請が入った。関口毬奈さん30歳、意識不明で瀕死の状態だった。しかも前日、意識を失ったまま帝王切開で女の子を出産していた。植木は感染症の担当だけでなく産婦人科など各所に連絡。受け入れの承認を得た。間もなく、毬奈さんが運ばれてきた。意識不明になってから3日が経過していた。