モーサテ 深読みリサーチ
きょうのゲストはシティグループ証券・江沢厚太さん。テーマは「総合電機セクター 今後の焦点は」。主要各社が2025年3月期の決算発表を控えている。江沢さんは「10-12月期、第3四半期の決算では各社が一定の構造改革・事業ポートフォリオの改革などを成果につなげ、中核となる事業の収益を拡大させた。一方、株価を見てみると過去2年、全体として推移は好調なパフォーマンスだったと言えると思う。一方で後半には続々と株価が天井を打ち、ボックス圏の推移に移ってきているように見える。『次の好材料は何か』と株式市場から催促されているような状況かもしれない。業績や事業の成長という点でも好材料が織り込まれてしまった印象があるが、経営改革・構造改革が一巡したことが大きいと見ている」などと話した。
電気セクターの先行きを見る上で、3点のポイントがある。1つ目はグローバル・マクロ(世界の経済指標)、次に電気産業の世界的な需要動向、3つ目が各企業それぞれの構造改革・経営改革の進展。江沢さんが特に注目するのは「構造改革・経営改革」で、「海外の投資家が日本の電機株を見るとき、差別化要素として評価・期待するポイントになるため」と話した。企業が事業に投じた資金に対してどれだけ利益を生み出したかを示す指標=「ROIC」が各社の焦点となる。この数字が8%を上回るとある程度効率よく経営できていると言われている。「WACC」はプラスだと企業価値を見出しているとなるが、総合電機メーカーの対応と成果にはグラフで見るとばらつきがある。全体的に見てさらにROICを高めたり資本コストを引き下げたりして”ROIC-WACC”の値を高めるなどにより今後の株価評価が高まると見ている。
江沢さんが注目する企業は三菱電機とパナソニックHDで、「三菱電機はこれからROIC経営が本格化するとみている。企業価値やROICを重視する経営方針と構造改革計画の発表が期待される。パナソニックHDは2月に発表した構造改革計画が今後実践されることで株価を更に押し上げるとみている。構造改革計画で注目されるのは、ROIC10%を目指す道のりが説明されることと、1,000億円以上の自社株買いを発表することの2点。ROIC10%達成には各事業での品揃えやサプライチェーンの見直しが必要だが、三菱電機は2年程度前から静かに取り組んでいる。加えて今後、事業の入れ替えや低稼働な資産の減損などがあれば中長期的に10%に到達する道のりは描けると考える。自社株買いについては市場の圧力によって仕方なくやるというのではなく、企業勝ちを高める視点に立ち戦略的に行うことができれば会社は生まれ変わったと言えると思う」などと話した。三菱電機の株価を確認した。
パナソニックHDの注目点について江沢さんは「固定費削減で利益を引き上げる計画だとみている。”1年でやり切る”と断言し、構造改革の退路を断ったということと、利益やキャッシュフローが現在出ている中でも人員削減を含む内部改善に取り組もうという姿勢がこれまでのパナソニックの経営とは異なっていると思う。すでに営業利益4,500億円が25年3月期の会社計画で示されており、今回はその上に構造改革により更に利益が積み上がり、27年3月期には約6,000億円の営業利益になる会社計画が示されている。固定費削減による利益拡大に加え、ROE・ROIC改善にも真剣に取り組むようなことが追加的に示されたり実行されたりする場合は、株価バリエーションがさらに引き上がり株価を押し上げる可能性もあると思う」と話した。
各社の投資判断、三菱電機について。みずほ証券は3月に開催された防衛事業説明会の内容を踏まえ、「期待度はある程度株価に織り込まれていた」として「中立」との評価。パナソニックについては、野村證券は従来以上にコスト削減効果を織り込み、「収益改善策による大幅増益が見込まれる」として「買い」の評価となっている。投資家が注意するポイントについて江沢さんは「主に2点ある。1つ目に短期の業績ではなく経営変化に注目すべきという点。経営者の交代や経営方針の新設などが重要なポイントになると思う。グローバル投資家の目線を意識するなら、日本企業の変化という点に注目した方が良い。もう1つは関税・為替・補助金政策などのマクロ指標。現在は不透明で変化の激しい時期に入っていると思うので、こうした動向にも注意を向けるべきだと思う」などと話した。きょうの番組終了後7時8分頃から「モーサテプレミアム」にて「モーサテ朝活Online」を配信する。