NHK映像ファイル あの人に会いたい NHK映像ファイル #625
自らの戦争体験を原点に戦争の悲惨さと愚かさを訴え続けてきた半藤一利さん。数多くのノンフィクション作品で戦中戦後の知られざる歴史的事実を掘り起こした。半藤さんは14歳の時に東京大空襲を経験する。九死に一生を得た翌朝、一面の焼け野原に立ち肝に銘じたことが「世の中に絶対というのはない」ということだという。大手出版社の編集者となった半藤さんは、小説家・坂口安吾につかまり泊まり込みで一週間酒の相手をさせられる。その時に、歴史探偵術を教えてもらったという。歴史探偵として手掛けた代表作「日本のいちばん長い日」は、まだ存命だった軍人や政治家など30人が参加した座談会を元に終戦を告げる玉音放送までの24時間に何があったのかを詳細に解き明かした。平成6年に出版社を退職し本格的に作家活動を開始する。「ノモンハンの夏」ではノモンハン事件の真相に迫った。歴史から正しい教訓を学ばなければこの国の未来は危ういと考える半藤さんは若い世代の実態に愕然とする。
半藤さんは歴史を学ぶことの大切さを伝えたいと分かりやすい講義形式で昭和史を執筆、自らの戦争体験とともに憲法9条と平和の大切さを説き続けた。2011年に地震と津波でベルトダウンした福島第一原発。そうした事態を想定する必要はないとして原発事業を推進してきた国の姿勢に、戦時中の無責任な指導者たちがダブって見えたという。戦後、廃墟からの復興を目指して反映を手にした日本。若い世代には新たな目標を持ってほしいという。晩年に手掛けた絵本「焼けあとのちかい」。半藤さんは信じないと心に決めた”絶対”という言葉を使って、子供たちに「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」とメッセージを送った。