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小倉昭和館にやってきた。一昨年火災で焼失し、昨年末に再建したばかりだという。光石さんはかつて舞台挨拶で何度も訪れたことがある。客席には映画館に縁の深い俳優や監督の名前が刺繍されている。光石さんは俳優像について、「なるべく忠実に監督の意向に沿うようにやりたいっていうのが第一」などと語った。
光石さんの故郷・北九州市は製鉄所を中心に栄え、鉄の街として知られた大都市。生まれ育った黒崎地区は多くの人で賑わっていた。撮影中も行く先々で声をかけられた。商店街で、光石さんの幼なじみの堀さんと出会い、昔話に花が咲いた。その後、近くの三角公園へ行った。
光石さんは30歳を過ぎた頃キャリアに行き詰まりを感じるようになった。その状況を変えたのは同郷である青山真治監督との出会いだった。青山監督作品の「Helpless」に出演した光石さんは、それまで経験のない役柄だったが存在感を発揮し、その後青山監督の作品に欠かせない俳優となった。この経験が光石さんの演技への向き合い方を変えていった。
去年主演した映画「逃げきれた夢」では、定年間近の教師が家庭や健康に悩む淡々とした日々を演じている。監督が個性なき個性を最大限に活かそうと、光石さんのために脚本を描き下ろした作品だという。光石さんはありのままを演じた。光石さんは今後の展望について「ああじゃあこれで使ってみようっていういろんな味のポテトチップスを出しとかないと」などと語った。