割烹料理店の丹精な技が光る月間15万食も売れる人気食

2024年11月21日放送 23:10 - 23:22 テレビ東京
カンブリア宮殿 カンブリア宮殿 亀戸発!下町老舗の愛情弁当

2023年の持ち帰りの弁当や、惣菜の市場規模はおよそ11兆円。コロナ禍以降に多くの企業がこの市場に参入し競争は激しさを増している。升本の売上はコロナがの落ち込みを盛り返し22億円。多くのファンを掴んでいる。升本は亀戸で長く料理店を営んでいる。升本フーズの社長は塚本光伸。その前身は明治後半の1905年に創業した酒屋が始まり。焼け野原となった戦後に、大衆居酒屋へと変身。高度成長期には大衆割烹に姿を変えながら、亀戸で商いを続けてきた。升本が弁当事業を始めたのは、2001年と比較的遅い。百貨店では新宿伊勢丹や大丸東京など4店舗で直営店を運営。郊外にもいくつか出店しているが店舗数はけっして多くない。そこには大手とは違った中小企業ならではの戦略が隠されている。升本の弁当工場では、割烹料理店ならではの技を随所に取り入れている。7種類の野菜が入った煮物は食材ごとに煮方や味付けを変化させている。たけのこは肌の白さが残るように薄い色で。逆にれんこんは色を付けるために、たまり醤油を使うにんじんは素材の甘みを活かすために醤油は控えめに。別々に炊いた食材を一つに盛り付ける炊合せという手の込んだ調理法を行っている。仕入れ担当は弁当を作ってくれる場所探しに苦労したという。
出汁が染み出る卵焼きは1本1本職人が手作りしている。多い日は5000本焼くという。ポイントは、あえて中まで火を通さないこと。実は焼いた後にスチームで蒸すという工程を加えている。さらにかまぼこなどの練り物まで手作りしている。そこに使うのは「たまもと」と呼ばれる隠しアイテム。卵黄にサラダ油を加え混ぜたもので練り物などに使用されている。このたまもとと片栗粉をつなぎに使うことでぷりっとした食感が生まれる。こうした手間ひまをかけ品質の差別化を行っている。さらに升本のすべての弁当に、欠かさずついているものは亀戸大根のたまり漬け。亀戸大根は、江戸時代の後期から亀戸の香取神社周辺で栽培は始まったとされている。長さは30センチほどと小ぶりで身も細いのが特徴。52種類ある江戸東京野菜だが、普段目にするのはほんの一握り。塚本はその一つの亀戸大根を今に残そうとしている。升本で使用している大根を栽培しているのは中代農園。この農園では、冬場の栽培は亀戸大根のみ。11月頃から4月まで月におよそ2000本を収穫。そのすべてを升本が買い取っている。農家にとっては一定の値段で買い取ってもらえば収入も安定する。升本も、江戸の伝統野菜を使用することで店の看板としてアピールできる。
麻布十番にある高級スーパーのビオセボンはフランス発のスーパーで有機栽培の野菜や、無添加の加工食品など健康志向の商品を扱っている。そんな店に升本の弁当も。おろしているのは、肉や魚、白砂糖を使用しない玄米や野菜中心の弁当。コロナ禍を機に健康に気を使う人が増えている。そんな時にいきついたのが、升本。ビオセボンの要望では玄米や有機野菜を使用し、動物性の食材などを使用しないということだった。そんな要望でも升本なら和食の技で応えることができる。動物性のかつおだしを使用せずに昆布出しで炊き上げたにんじんとそこにえのきを乾燥させて粉にしたもの。鰹節によくにた風味がするためにこれを加えることで味い深みがでる。升本にはこの手の和食の引き出しがいっぱいあるためにビオセボンの要望に無理なく対応できた。こうした弱者の戦略で、22億円の売上の内8割近くを弁当事業で稼ぎ出している。


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