時論公論 (時論公論)
クロマグロの太平洋での漁獲枠を大幅に増やすことが国際会議で合意された。増枠になれば今の規制が導入されて以降、大型は2022年以来、小型は初めての増枠となる。クロマグロは一般的には本マグロと呼ばれ、漁獲量はマグロ全体のうち2%程度の最高級品。WWFによると全世界の76%は日本で消費されている。特に太平洋クロマグロは多くの日本の漁業者が多く漁獲している。実際出回るクロマグロは養殖が多数だが、大半は天然の小型魚を活用している。現在の厳しい規制は減少の危機に直面したため。戦後、消費量の増加から乱獲が顕著になり、2000年代には歴史的最低水準近くになった。日本への風当たりが厳しくなる中、太平洋クロマグロの国際会議では2009年以降、段階的に規制を強化。2014年には踏み込んだ規制に乗り出した。
水産庁は当初、漁業者に自主的な調整を求めたが、規制を初めて3年目の2017年に函館市・南かやべ漁協での大量捕獲が問題になった。5日間で北海道の配分量(年間)漏れの6倍以上を定置網で漁獲したが、地元からは「網の目を大きくするしかないが、そうすると他の魚も逃げてしまう」という切実な声が上がった。水産庁は超過した分の北海道の漁獲枠を6年間差し引く措置に踏み切った。もう一つ大きな問題は、2021年に青森・大間町で起きた無報告漁獲の事例。仲卸業者の社長2人が逮捕されたが、社長は「困っている漁業者を助けたかった」ということだった。こうして現場の混乱を招きながら規制は継続され、おおむね国際規制を順守。その結果、資源は急速に回復した。
クロマグロの持続的利用へ残る課題について。漁業者の課題は増枠の幅が希望より小さいこと。配分を巡って漁法・地域ごとに十分な話し合いが必要になる。漁業者に定着してきた資源管理への意識を引き続き保つことも欠かせない。消費者はクロマグロの状況をよく認識すること。規制を守り、資源を増やし、漁獲枠が増加となるのは画期的な出来事。おいしい本マグロを食べ続けるためにこの流れを持続させることが何よりも重要となる。