グッド!モーニング 独自取材
年末が近付きふるさと納税の駆け込み寄付をする人も多いのではないか。ふるさと納税により巨額の税流出に悩む川崎市が打った逆襲の一手を取材。住んでいる地域とは別のところへ税を納めその金額に応じて返礼品を受け取ることができるふるさと納税。地方の活性化に役立っているという声がある一方で深刻化しているのが都市部の税収の流出。総務省によると今年度ふるさと納税を利用して住民が他の自治体に寄付を行った影響で最も住民税の税収が減る見通しの自治体は、横浜市で、流出額は約304億円。続いて名古屋市で約176億円、大阪市で約166億円、川崎市、世田谷区と大都市や東京23区の自治体が並ぶ。こうした事態に東京都は国へふるさと納税制度の抜本的な見直しを求めている。東京都・小池百合子知事は「受益と負担という地方税の原則をゆがめている。“官製通販”みたいな制度になっている」と語った。
税収の流出が多い自治体。江東区政策経営部シティプロモーション担当課長・森澤友貴さんは「今年で(およそ)54億円の流出(見込み)」と語った。ふるさと納税制度自体に反対の立場だが、流出額は増える一方。背に腹は代えられず先月から返礼品付きのふるさと納税の受け付けを始めた。森澤さんは「江戸切子、キッザニアや万葉倶楽部の体験型返礼品を用意」と語った。住民税の流出に悲鳴を上げている自治体はほかにも。流出額が全国4位の川崎市は、約136億円の税収減となる見通し。川崎市財政局資金課・大島崇担当課長は「年間のごみ収集とか、ごみ処理に150億かかる。9割ぐらいの金額になっている」と語った。川崎市もふるさと納税制度の問題点を訴え続けてきたが、市民生活に影響が出かねない事態に、会見で川崎市・福田紀彦市長は「本格的に参入していく」と述べた。
市長の命を受けて慌ただしく動いているのが財政局資金課のふるさと納税チーム。返礼品として人気の農産物や海産物はあまり多くない川崎市。その代わりに目をつけたのが市内に数多くある企業や工場。川崎市財政局資金課・大島崇担当課長は「一次産業みたいなものではなく、工業製品がいろいろある。一生懸命返礼品を見出している」と語った。市内に本社を置くオーディオ機器の製造会社と打ち合わせ。返礼品に協力することは企業側にとっても大きなメリットがあるという。Final・木村明人さんは「返礼品として参加すると、ふるさと納税の方から客が来たり、ファイナルを知ってもらえたり、すごくメリットがある」と語った。川崎市は物だけでなく体験型の返礼品にも注力。2階建てのレストランバスに乗り美しい工場の夜景を見て回りながら食事を楽しむディナーツアー。そのほか航空会社・ANAの機内食工場を見学するツアーや川崎市内も走るJR南武線の車両メンテナンス体験なども出品。寄付金額の少ないトイレットペーパーや洗剤といった日用品も人気。川崎市がふるさと納税の返礼品として新たに用意したのが、実際に市内を運行していた市営バス。寄付額は1300万円だが、早くも問い合わせが。川崎市交通局・大和田慶さんは「バスの好きな方は全国にいる」と語った。ふるさと納税チームの大島さんは、バラエティーに富んだ返礼品を用意する過程で川崎市の様々な魅力に気付くことができたと話す。