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鉄道会社が震災当日に自社のヘリを飛ばして撮影した映像が流れた。阪急・伊丹駅ではホーム野中央が陥没していた。中でも大きな被害を受けた1つが高架橋。1.6キロにおよぶ高架橋が横倒しになり、復旧に数年かかるとみられていた。復旧現場で工事監督をしていた川上さんは、初めて現場を見た時の衝撃を忘れられないそうで「現実と見たときは信じられなかった。大蛇のように横たわっていた」と語る。復旧に向けまず着手したのが線路上に残された車両の撤去。阪急では全線で90あまりの車両が被災していた。当時、会社では「残った部分はそのままにして補修」か「全面的につくり直す」かで議論があったという。それまで1つの線路を1本の橋脚で支えていたが、コの字型の丈夫な鉄骨の橋脚を造った。さらに鉄骨に巻き付ける帯鉄筋の間隔を狭めるなど耐震性を高めた。一方で工期を少しでも短縮するため、十合さんらは使えるものをリサイクルすることにした。震災同年3月に基礎工事が行われ、4月には鉄骨が組み始められ、5月にはほぼ高架が完成している。作業は24時間体制で進められた。作業員の中には自身も被災し毎日避難所から現場に通う人もいたという。当時現場にいた川上さんは「リュックを背負った人がたくさん通っていて、多分通勤か通学か、物資を求める人だったと思うが、そんなみなさんの状態だったので、なんとかすぐ復旧したいという思いで工事関係者みんな頑張っていたと思う」と語る。さらに大きな力となったのが高架下の商店や地域住民の理解と協力だった。そして5月30日、完成した高架の上を試験列車が走った。震災から約5ヶ月後の6月12日、梅田-三宮間が全線開通した。川上さんは「いつもの時間にいつもの場所を通るのが鉄道だと当時は思っていたので、その神話がその時に壊れてしまったんですが、より強固な鉄道構造物をつくっていき、鉄道の安心・安全を守るのが我々の仕事かなと思う」などと話した。鉄道各社では南海トラフ地震などを想定した防災にも力を入れている。その1つが「避難看板」。災害などで電車が停止した際、乗客が避難する方向を示すもの。今回取材した阪急電鉄では2026年度中に全線で整備予定。