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公正取引委員会は、独占などで企業どうしの競争原理が働かなくなることで価格が不当に上がるようなことがないよう、目を光らせる競争の番人。このところ、競争を促すための政策を相次いで打ち出している。トップを務める古谷一之委員長にそのねらいを聞いた。公正取引委員会はことし8月、食品メーカー大手・日清食品に対し、主力のカップ麺など5つの商品を巡り、独占禁止法違反にあたるおそれがあるとして警告を出した。希望小売り価格の値上げに合わせて、店頭などでの販売価格を引き上げるよう小売り店に求めていたという。古谷氏は「小売業者の価格設定について、自由を奪うようなことをすると行き過ぎだと。当然消費者の皆さんにも影響のあるような取り引きについてしっかりウォッチしていかなきゃいけないと思っている」と述べた。
そして今、力を入れるのが巨大IT企業への規制。ことし6月、アップルやグーグルを念頭に、スマートフォンの分野で適切な競争を確保するための“スマホソフトウエア競争促進法”が成立。規制の対象は、ブラウザや検索エンジン、アプリストアなど。中でもiPhoneの場合は、現状ではアップルのアプリストアを使わなければアプリを購入できない仕組み。そうした独占状態がソフトの開発業者による、より便利でより安い商品の開発を妨げているのではないかと公正取引委員会は問題視。ほかのアプリストアも使えるようにして、競争を促したいとしている。ただ、巨大なIT企業をどう規制していくのか。公正取引委員会は、担当部署を拡大して監視能力を強化する一方で、巨大IT企業と取り引きのある業者にも加わってもらう新たな対応策を導入する。具体的には、巨大IT企業側に新たな規制をどのように守っているかという報告書の提出を義務づけたうえで、その内容を公開し、取り引き業者などとも対話を重ね、問題行為がないか幅広く情報を集め対応していくとしている。
こうした競争を促進する政策とともに、公正取引委員会が力を入れているのが、適正な取り引きの推進。とりわけ、大企業などと取り引きをする中小企業が、原材料や賃金の上昇分を価格に転嫁できるようにすること。それが、物価と賃金の好循環実現の鍵を握る。しかしことし3月、日産自動車が下請けのメーカーに支払う代金を一方的に引き下げていたことが下請け法に違反するとして、公正取引委員会から勧告を受けるなど、適正な取り引きが経済界に十分浸透していないという指摘もある。公正取引委員会は今週、生成AIの市場についても調査を始めると発表した。高い技術力や大量のデータを持つ巨大IT企業によって競争が損なわれることのないよう、実態の把握に乗り出すとしている。