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愛媛県に、人口1万9000人に対してスナックやバーが40軒余りもある町がある。その夜の街の文化を観光資源にしようと、最新のデジタル技術を使った取り組みが行われている。愛媛県愛南町にある老舗のスナックで客が囲んでいるのは、大きな液晶画面。端末で結ばれているのは、700キロ離れた東京の銀座にあるバー。遠く離れた夜の街どうしをデジタルでつなぐ実証実験が行われている。愛媛県最南端にある愛南町は、かんきつの栽培や魚の養殖などが盛んだが、高齢化が進み人口減少が大きな課題。それでも夜になるとスナックに灯がともり、街の人たちは夜な夜な「はしご酒」に繰り出す。この文化を観光資源として全国に発信して、観光客を呼び込もうと考えた。東京のスタートアップ企業が開発したこの遠隔システムの特徴は、まるで同じ空間にいるかのような臨場感。通常のビデオ会議では声の聞き取りやすさが優先されるため、話している人以外の音は意図的に絞られるが、このシステムはあえて周りの環境音を拾う特許技術を組み合わせている。さらに、画面のサイズもポイント。会社は、人は相手の腰から上が見えると目の前にいる感覚が得られるという特性を利用している。システムを開発した会社の阪井祐介CEOは、大手電機メーカーから独立して、デジタルを使ったコミュニケーションの研究を続けてきた。一方、今回の実証実験では、音響のリアルさを追求したことによる課題も見えてきた。愛南町のスナックのママの入江由美さんは「みんなの声が大きすぎて東京のバーのマスターとの会話がちょっと難しかった」と述べた。会社は、もっと自然にやり取りできるよう改善できれば、さらなる可能性が生まれると考えている。この遠隔システムは、医療や金融機関の商談などの現場でも使われているという。