ニュースウオッチ9 (ニュース)
MCI(軽度認知障害)は健常な状態と認知症の中間のような状態とされている。アルツハイマー型の認知症などの場合は一般的に年齢を重ねるごとに認知機能が低下。MCIは、認知症ではないもののその一歩手前の段階。MCIの高齢者は来年には560万人余、約6人に1人に上るとされている。MCIはどんな状態なのか、本人や家族はどう対応すればいいのかまだ広く知られていないことが課題。MCIの実情やいち早く始まった支援の現場を取材。72歳男性はことし病院でMCIと診断された。最初に夫の変化に気付いたのは妻。男性自身は自分の変化に気付かなかったという。診断を受けて妻は日々試行錯誤を続けている。MCIは必ず認知症になるわけではなく、食事や運動などによって認知機能が回復することもあると聞き食事を見直した。脳の活性化につながると考え、皿洗いなどの家事にも積極的に取り組んでもらっている。男性は今も仕事を続けていて、診断を受けてからは仕事の予定や会話の内容を細かくメモに残している。病院で定期的に診療を受けているが、今はMCIであることを深刻に考えないようにしている。兵庫県立リハビリテーション西播磨病院は当事者にアンケート調査を実施。MCIと診断された150人余りに今の困り事は何か聞いたところ、最も多かったのが物忘れ置き忘れで49%。ほかにも体調がすぐれない、やる気が起きないという声もあった。調査を行った兵庫県立リハビリテーション西播磨病院・高橋竜一医師は「MCIの状態を正しく理解し、今後にどう備えるか知ってもらうことが大切」という。MCIと分かったときにどう対応していけばよいのか。病院では、2年前からMCIの本人と家族を対象にした教室をいち早く始めている。MCIの人が地域でも支援につながるよう今年からは地域包括支援センターの職員にも参加してもらい、当事者との橋渡しをしていこうとしている。兵庫県立リハビリテーション西播磨病院の教室に参加して、今のうちにできることを始めようという人もいる。去年MCIと診断された女性は、自分で意思決定できる今を大切にしたいと考えており、去年承認されたレカネマブの投与を受けている。MCIや軽度の認知症の人が対象で症状の進行を遅らせる効果が期待されている。女性が今後の生活を考えるうえで始めたのは家の中の整理。今後は地域にどんな支援窓口があるのか確認しようとしている。女性は「“今しておかないといけない”と思うから、(早めにMCIとわかり)むしろよかったかなと」と語った。高橋竜一医師は「今後どうなるかの知識がないまま、MCIで過ごしている患者は非常に多い。全国的にもMCI教室のような場が広がっていけばいいと考えている」と語った。