- 出演者
- 桑子真帆
今、大学の授業料の値上げが相次いでいる。大学にアンケートを行ったところ約7割が値上げを実施・検討中としている。人口が減少する社会の中で変革が求められる大学教育はどうあるべきなのか?
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国立・私立大学の授業料の推移をみてみると、私立の平均は長年上昇し続けてきたが、国立では等しく教育の機会を提供しようと国が定める標準額に合わせてこの20年据え置かれてきた。こうした中で近年、8つの大学が値上げに踏み切っている。
授業料の値上げに直面している千葉大学4年の山崎響生さん。山崎が入学する前の年に授業料は10万円値上げされた。4年間の授業料は親が負担した。山崎さんは実家から離れて暮らし、仕送りはなく家庭教師のアルバイトで生活費を稼いでいた。それでも不足するお金を補うために借りているのが奨学金、4年間で576万円。近年、都市部では授業料の値上げに踏み切る国立大学が増えている。今年4月から10万円の値上げをする東京大学。理由のひとつは光熱費や人件費の上昇。さらに国際競争に対応するため教育環境の充実するとしている。値上げの発端となったのは21年前の国立大学の法人化。それまで、大学の収入の約半分は国の予算が占めていたが、法人化後には経済的な自立を求められるようになる。国からの交付金は年々減らされることになった。
地方にある国立大学の中には値上げをしない事情もあるという。授業料の値上げをしないのは都市部に比べ所得が低い地域でも学ぶ機会を確保するためだという。大学の厳しい財政状況は学生の学びに支障をきたしている。高知大学の理工学部の研究室、研究に欠かせない遠心分離機が何年も前から故障しがちだが買い替える費用が工面できず、実験に一部制約が出ているという。土佐あかうしの生態を学ぶ研究室でも排泄物を運び出す設備が度々故障している。修理する間は学生たちが自ら作業をしなければならず、研究する時間が削られてしまう。高知大学では国や自治体からの研究費や企業からの寄付を集めようとしてきたが、十分ではない。
近年、値上げを行った大学は国立大学でみると東京近郊のみ。小林浩さんは国が財政赤字を抱える中で法人化は必要性があったが、地方では家計所得が伸びない中で国立大学は公共財的な位置づけがあったという。国の目的は大学が切磋琢磨しながら向上していくことだった、競争環境は浸透してきたが、競争的資金を獲得するためのパワーによって教育研究にかかる時間が少なくなってしまったという声もあるという。1960年代ぐらいまでは大学進学率は15%ほどだったが、進学率が高まっていくが、今は60%近くなっている。今は大学を選ばなければどこかに入れるという時代で私立大学の6割が定員割れとなっている。人口減少社会の中で今後、大学の学生数は3割減少するとされている。今のままでは持続が不可能になる。
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宮崎県にある私立の南九州大学、学生数は1000人。少子化などにより定員割れが続き、年間2億円の赤字に陥っている。この大学では大学のあり方を見直し、経営の改善をはかることにした。まず取り組んだのは定員200人の短期大学部の廃止、2億2000万円の経費を圧縮する計画。地域課題を解決できる人材の育成により重点をおくことにした。後継者不足に直面する農業分野で活躍する人材を輩出するなど地元から必要とされる大学を目指すことにした。さらに、自治体と連携も強化。去年からはじめたのは増加する不登校の子どもたちの居場所づくり。小学校の先生を目指す学生が週に3回、大学で学習支援を行っている。
小林浩さんはそれぞれの大学が強みや特色を明確化して打ち出していくのが重要だと思う、特に地域では地域産業の担い手や地域に必要なエッセンシャルワーカーを育てることとなどが重要だとした。国の試算によると、人口減少に合わせて中間的な規模の大学の数は年間90校ずつ減少すると予想されている、地域によっては空白地帯ができてしまう可能性もある。
今年4月、大IT手企業と公益財団法人がタッグを組み新たな大学を開学する。1万を超える授業動画をオンラインで提供し、学生は卒業すれば学士号が得られる。授業料は年間38万円、国立大学よりも安く設定された。目標のひとつは住んでいる場所に関わらず教育の機会を提供すること。さらに、学問の垣根を超えた多彩な授業も特徴のひとつ。学生募集開始から1か月余りですべての都道府県から2000人以上の申し込みが集まっている。オンラインを入り口に大学教育を変革しようとする動きは新たな選択肢になるのか注目されている。
小林浩さんはこれまで日本の大学は従来型の学生、国内で18歳で対面で学ぶのがメインだったが、今後は新しいマーケットとして海外や学び直し、オンライン、など活用していくことが必要になる。新しい学生に対応した形の質をどのように保障していくのかが大事だと話した。大学など高等教育への公的支出割合のGDP比では日本は38か国中、下から3番目。学費は家庭が負担することを原則とした制度とすべきかとアンケートでは意見が2つに分かれた。現在は税制のあり方や寄付の充実などを通じて学びを支える新たな財源が議論されている。小林浩さんは大学教育は未来への投資、人口が減少する中で一人ひとりの知力を上げていく、知の総和を上げていくことが大事だと話した。