- 出演者
- 桑子真帆
生活に欠かせないプラスチック製品が小さな粒子となって体の中に?ある医師が発表したのは衝撃の研究。動脈硬化症の患者の血管から見つかったのはマイクロプラスチック。プラスチック粒子が患者の死亡リスクを高めている可能性がはじめて報告された。
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オープニング映像。
マイクロプラスチックはどのようにして体内に取り込まれるのか?富士山の山頂にある研究所で大気の調査を行っている大河内博教授。大河内教授は特集な装置を使って2か月間、山頂の空気を収集し、物質を分析した。すると、大気中にプラスチックが紛れ込んでいたことがわかった。調査で見つかったのは食品容器などに使われるポリエチレンやポリプロピレンなど14種類、ほとんどが目に見えないほど小さいもの。これまで、海洋生物への影響が懸念されていたマイクロプラスチック。大河内教授は人間が取り込んでもおかしくない状況だと指摘する。
去年、人間の血液中にプラスチック粒子があることが国内の研究で初めて確認された。高田秀重教授の研究チームは11人の血液を調査すると、4人の血液からポリスチレンというプラスチックが検出された。ポリスチレンは使い捨て容器が透明のコップに使われる。
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マイクロプラスチックはどこでどのようにできるのか?マイクロプラスチックを調査する企業の代表・小嶌不二夫さん。小嶌さんはゴミがマイクロプラスチックの主な発生原の一つだという。適切に処理されなかったプラスチックゴミ、摩擦で削れたり劣化することでボロボロになり、微細なプラスチックへと変化する。小嶌さんは全国各地の海や川を調査し、マイクロプラスチックのもとになる製品を追跡した。発泡スチロールやブルーシート、人工芝など様々なものが由来となっていることがわかった。マイクロプラスチックは人体への影響はあるのか?近年、小さな粒子となったプラスチックの毒性に関する研究が急増している。論文の数はのべ8747本、この5年で約8倍に伸びている。今回、その論文を全論文解読システムで分析した。
イタリア・ナポリにいる論文の執筆者ラファエレ・マルフェッラ教授。医師として血管の病気の治療にあたっている。動脈硬化症の患者が増える中、その原因を調べたところプラスチックが要因のひとつである可能性に行き着いた。動脈硬化症304人の患者に対し、血管をつまらせる原因となる脂肪分などの塊・プラークを取り除く手術を行い、その中身を分析した。すると、約半数の患者のプラークにプラスチック粒子が含まれていた。約3年にわたり疫学調査を行ったところ、プラスチックが見つかった人はそうでない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中などの大きな病気にかかったり、亡くなったりするリスクが約4.5倍高かった。プラスチックは体内でどのような影響を及ぼすのか?マルフェッラ教授の仮説では、血管のプラークの中のプラスチック粒子を異物と判断し、免疫細胞が粒子を排除しようと取り込み、血管内で炎症が起きる。その結果、血流が悪化して病気につながるのではないかという。
イタリアの研究では、はじめてプラスチックと病気の関係性がみえてきた。高田秀重教授はこれまでの研究でも免疫系にプラスチックが影響していることは分かっていたが、今回の研究では疫学調査を行って患者の疾患とプラスチックの関係を明らかにしたことで世界中の研究者が注目しているという。プラスチック粒子はプラスチック製品を使い、適切に処理されずに粒子状になったものを、魚や大気中などから取り込むことがある。添加剤などの化学物質はプラスチック製品を作る際に使われ、強度を高めたり、紫外線劣化に強くしたりするもの。プラスチックに使われる添加剤などの化学物質は約1万3000種類あり、このうち発がん性や生殖機能への影響などに潜在的な懸念があるものは約3200種類以上。規制されているのは約130種類。高田教授はプラスチックが劣化することで危険な添加剤が溶け出して人体への影響が出てくる可能性があるのだという。世界のプラスチック使用量は2019年には4.6億トン、今後2060年には3倍に膨らむと予測されている。
去年12月まだ韓国・釜山で開かれていた国際会議。プラスチックによる環境汚染を防ぐための条約締結にむけて議論を重ねてきた。議論の焦点は、世界のプラスチック生産量に上限を設けるかどうか。実現すれば、企業活動や暮らしが変わるきっかけになると期待する声もあったが、プラスチックの原料となる石油の産出国などが反対し、合意には至らなかった。国際的なルールづくりが進まない中、プラスチック製品を扱う企業では、独自の取り組みを行っている。洗剤やシャンプーボトルの製造にはプラスチックが欠かせない。取り組んでいるのが再生材の使用。使用済みのプラスチックから作られるリサイクルのボトルの割合を増やそうとしている。しかし、再生材ボトルを作るには、回収・加工・製品化という仕組みが必要で日本では1社だけでは困難な状況。国際的な規制が進めば国や業界全体でリサイクルの仕組みづくりが進むと期待していたが、先行きが見えない状況が続いている。
プラスチック削減のために、新たな技術開発を進めいる企業も課題に直面している。大手包装資材メーカーではマイクロプラスチックを発生させない素材の開発に取り組んでいる。大学と共同研究で開発した海洋生分解性フィルムという新素材、海中で微生物が分解し、環境中に残らない素材。一方で真水にはとけず、耐久性に優れていて、国際的な認証を取得した。課題は製造コスト、従来の20~30倍かかる。
どういうルールがあれば企業の取り組みが後押しされるのか紹介。再生材使用の数値目標を設定すること、使い捨てプラスチックを禁止すること、プラスチックの規制に詳しい三沢行弘さんは共通ルールが整うことで適正に競争できる効果があるという。直近の条約交渉では、生産段階での規制を含めた条約を求めた国が約100か国、石油産油国は反対しているが、立場を明らかにしていない国がより野心的な条約を進めるべきだとして他の国に働きかけることで野心的な条約ができるのではないかという。プラスチック対策の優先順位を紹介。削減のリデュース、再使用のリユース、再資源化のリサイクルの順で進める必要がある。日本はリサイクル対策は進んでいるが、リユース・リデュースが進んでいないという。容器包装プラスチックは日本での1人あたりの使用量は年間約30キロ。三沢行弘さんは今地球には三重の危機がある、汚染・生物多様性・気候変動、プラスチックはこの3つに密接に関わっていると話した。
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