- 出演者
- 桑子真帆 桑原阿希 山縣文治
東京・墨田区の賛育会病院に密着。この日、赤ちゃんポスト開始を前に受け入れの訓練が行われていた。母親などが赤ちゃんを預ける場所は病院の通用口の先。専用部屋にはカゴが置かれ、周囲の人に知られず赤ちゃんを預けることができる。病院はこの取り組みを“ベビーバスケット”と呼んでいる。ベビーバスケットが始まった4月、赤ちゃんが預けられたことを知らせるアラームが鳴り響いた。残されていたのは、裸でタオルにくるまれた赤ちゃん。預けに来た女性の姿はすでになかった。赤ちゃんすぐに保育機の中へ。赤ちゃんの傍らには自宅で産んだという女性からの手紙が残されていた。「お金がなく、子どもを育てることができません。身勝手で申し訳ありませんが、この子にはどうか生きてほしい」と書かれていたという。賛育会病院の賀藤院長は、さまざまな事情を抱え、妊娠・出産で悩む女性たちの姿を目の当たりにしてきた。この病院での去年の分娩数は743件。そのうち、困難を抱えた特定妊婦は10%いたという。
東京・墨田区の賛育会病院に密着。この日、自宅で産んだ赤ちゃんを預けたいという女性が病院を訪ねてきた。産まれてから20時間ほどの赤ちゃん。健康状態に問題はなかった。女性は産後の貧血などがあり、そのまま入院することになった。 一度は赤ちゃんを預け入れようとした女性。次第に気持ちに変化が生まれていた。両親に出産したことを伝え、児童相談所の支援を受けながら赤ちゃんを育てていくことを決めた。
取材した病院での赤ちゃんの預け入れはこれまでに数件あり、首都圏だけではなく関西から訪れた人もいたという。
東京・墨田区の賛育会病院に密着。この日、20代女性から家族に内密で出産したいと電話があった。1時間後にやって来た女性はすでに破水していて、妊婦健診を一度も受けていなかった。診察の結果、合併症があることが判明。自然分娩ではリスクがあるため、緊急で帝王切開の手術が行われた。3000gを超える赤ちゃんが産まれた。出産したのは大学に通う女性。話を聞くことができた。子どもの父親は元交際相手。金遣いの荒さなどめぐって別れたため、妊娠後も連絡は途絶えたまま。女性は遠方に住む両親に妊娠を知られたくないと考えていた。過干渉な一面があるからだという。病院は内密出産を選べば、子どもとの法的な関係が絶たれてしまうことなどを女性に説明。1週間後、女性が記入していたのは、将来赤ちゃんが18歳になったときに自分の情報を伝えてもいいという書類。出産を内密にするという意思は変わらなかった。
熊本・慈恵病院「こうのとりのゆりかご」の検証にも携わった山縣文治さんは「本来は男性も関与すべきだが、男性がほとんど登場してこないという現実。男性にも共同責任があるんだということを自覚する社会をつくっていかなければならないというふうに思う」などとコメントした。