- 出演者
- 桑子真帆 齋藤恵二郎 浦上拓也
番組で可視化した全国下水道マップでは都市部ほど下水道が老朽化していることが分かる。埼玉・八潮市の道路陥没事故が突き付けたのは耐用年数の50年に満たない下水道管にもリスクが潜んでいるということ。八潮市で破損した下水道管は使われ始めてから42年の物だった。この事故を受け、国は全国の自治体に特別重点調査を要請。対象としたのは直径2m以上で設置から30年以上経っている下水道管。都市部での調査で今後対策が必要な下水道管は14.6%にのぼることが分かっている。
専門家はリスクのある下水道管が見過ごされるおそれがあると指摘している。実は3年前、八潮市の事故現場の下水道管調査では鉄筋が露出していないとしてB判定。ただちに対策が必要とはならなかったにである。
水道事業の経営に詳しい浦上さんと水道インフラを取材している齋藤記者をスタジオゲストに迎えた。浦上さんは「今回の八潮の事故はわれわれにとって衝撃的だった。これから日本全国どんどん老朽化が進行していく。全部の自治体にとっての大きな課題であるということが衝撃をもって認識された」などと話した。
都市部の下水道管の長さは地球3周分にのぼる。これだけの距離を維持・管理していかなければならない。下水道管の長さが合わせて8300kmにも及ぶ札幌市。これまで経過年数などから優先順位をつけて調査をしてきた。ただ、年間で実施できるのは220km。全部調べるには38年かかるペース。時間がかかる理由の一つが調査に危険が伴うこと。先月、埼玉・行田市では下水道の点検中に作業員4人が硫化水素中毒などで亡くなっている。さらに、計画を進める上でハードルとなっているのが人手不足。八潮市の事故以降は自治体からの依頼が殺到。
103の自治体のアンケートでは7割以上が「民間業者の人手不足を感じる」と回答しているという。
約5000kmの下水道管が広がる大阪市。老朽化率は50%を超えている。大阪大学と共同で下水道管の劣化速度を予測する研究を行っている。設置年数だけでは見えてこない劣化状況を割り出し、効率的に対策を進めようとしている。劣化予測を効率的に行おうと下水の中の微生物を分析する研究も進んでいる。一方、下水道管の寿命を延ばす技術にも注目が集まっている。
私たちができることは、大前提として下水道管の役割を理解すること。「油・ティッシュを流さない」「排水溝にタバコ・ゴミを捨てない」「工事への理解」も必要。