- 出演者
- 桑子真帆 重松清 玄田有史 三宅香帆
オープニング映像。戦後80年、カメラが記録し続けてきた映像から明日への希望を探る。
スタジオゲストの重松清さん(作家)・三宅香帆さん(文芸評論家)・玄田有史さん(東京大学教授)とともに、戦後80年を振り返る。世論調査「今後の生活の見通し」では、「良くなっていく」と「悪くなっていく」が時代ごとに大きく変化している。重松さんは20年の戦後60年を振り返る番組にも出演。そのときの番組サブタイトルが「混迷の時代」だったそうだが、重松さんは世論調査のグラフを見て「(良くなっていくが)全然変わってない。2005年は混迷の始まりだったんじゃないかという気がしている」などと話した。
終戦から復興を目指した時代を振り返った。1945年8月、太平洋戦争が終戦を迎えた。この頃、人々が直面していたのは食糧難。当時の食糧事情は戦時中より悪かったといわれている。混乱を抑えるため、ラジオを通して天皇自ら国民に呼びかけていた。その後、日本は本格的な復興へ歩み始める。きっかけの一つが1950年に勃発した朝鮮戦争。日本で造った軍事物資をアメリカなどが大量購入。特需景気で人々の暮らしに余裕が生まれ始める。戦後10年当時の世論調査「今後の生活の見通し」は、「良くなっていく」10%、「悪くなっていく」40.2%だった。1960年、池田首相は所得倍増を宣言。日本は高度経済成長期を歩んでいく。三種の神器が登場し、目に見えて暮らしに豊かさが増していった。戦後20年当時の世論調査「今後の生活の見通し」は、「良くなっていく」51.8%、「悪くなっていく」6.9%に。
三宅香帆さんは戦後の書籍を分析している。三宅さんは「今も昔も、若い人の生きづらさは変わらないのかなと思ったりする」などと話した。
高度成長期を歩む時代を振り返った。多くの人が豊かさを実感し始めた1970年代、大阪万博が開幕。日本のパビリオンでは、ワイヤレステレホンやリニアモーターカーなどの近未来技術が展示された。「モーレツ社員」という言葉が話題になったのもこの頃。1970年の年間総実労働時間は2200時間以上。その後も2000時間以上で推移した。当時、東京などの都会で暮らす人には悩みの種があった。それは住宅事情。4畳半で一家が暮らすという光景も珍しくなかった。
戦後20年以降を重松清さんは10代、20代で過ごした。重松さんは「(当時)子ども・若者の存在感があった。日本全体が若かった」などと話した。
戦後復興を経て豊かさを享受するようになった時代を振り返った。1970年代終わり、冷戦下にあったアメリカとソ連の間の緊張が高まり、世界中に核戦争への危機感が広まった。世界で唯一の被爆国である日本では反核運動が盛り上がりをみせる。
戦争の記憶について玄田有史さんは「希望を持つ人は過去に絶望・困難を経験した人が多い。困難な状況から前に向かって行くときに託す言葉が“希望”だったりする。絶望の歴史はなかったことにしてはいけない。見つめ合うことから希望が生まれる」などと話した。
日本が曲がり角を迎える戦後40年以降を振り返った。1980年、自動車生産台数が世界一となり、経済大国としての地位を確立した日本。1980年代後半になると、空前の好景気が到来。この頃、「日常生活の中で悩みや不安を感じていない」と答えた人は51%にのぼった。調査が始まった1958年から現在に至るまで「不安を感じていない」が半数を超えたのはこの時期だけ。しかし、1990年に入ると株価は急落しバブルが崩壊。失われた30年ともいわれる時代に突入する。相次ぐリストラ。1998年には失業率は当時としては戦後最悪となる4.1%を記録した。雇用環境の悪化は若者を直撃。就職氷河期をもたらした。同じ頃、阪神・淡路大震災が発生。6434人の死者を出した。
2005年の世論調査「今後の生活の見通し」では、「良くなっていく」が8.4%、「悪くなっていく」が26.7%、「同じようなもの」が59.4%という結果となった。玄田有史さんは「働くことが希望だった時代から、リストラや就職氷河期の中で不安感が強まった」などと話した。
2008年、世界的金融危機を引き起こしたリーマンショック。その波は日本経済を直撃。2009年3月には日経平均株価がバブル崩壊後の最安値を記録した。業績が急激に悪化した製造業では大規模な生産調整の末、派遣労働者の雇い止めが相次いだ。そして、2011年。東日本大震災が発生。最大高さ40mの津波が東北や関東沿岸の町を襲い、2万人を超える犠牲者が出た。福島では原発事故が発生。絶対に事故は起こらないという安全神話が崩壊した。2020年になると新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るった。
2024年の世論調査「今後の生活の見通し」では、「良くなっていく」が7.1%、「悪くなっていく」が31.2%、「同じようなもの」が60.9%という結果となった。この傾向は20年ほど変わっていないことが分かる。玄田有史さんは「VTRを見ていると数字には現れていない変化が起こり始めているのかもしれない」などと話した。
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番組では、手応えを感じながら日々を暮らしたいという姿も追っている。地方に移住し新たな生き方を模索する若者たちや好きなアイドルやキャラクターなどに情熱を注いで応援する推し活などを取材してきた。
世論調査「今後の生活の見通し」によると、今も3人に1人が将来に対して希望を見出せていない。この現状に対して玄田有史さんは「国・政治がやるべきことは希望を”与える”ことではなく、絶望を“回避”すること」などと話した。
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戦争体験者の語りをもとにつくられたひめゆり平和祈念資料館。体験者が少なくなる中、当時の実相を伝えようとしているのは地元の高校生たち。自らの言葉で語っている。
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エンディング映像。