- 出演者
- 桑子真帆 小嶋章史 牧原出
参院選を経て新たな局面に入った日本政治の形を展望する。衆参で過半数割れとなった与党。石破首相は続投の意向を表明、「新たな政治のあり方」とは何なのか。そのカギを握る与野党の幹部に密着した。そして参政党の躍進は何をもたらすのか。動き始めた与野党の最新報告。
オープニング映像。
石破首相は引き続き政権運営にあたる意向を表明し、野党の協力を呼びかけた。参院選を取り仕切った木原誠二選挙対策委員長は選挙期間中、「自民党が政権を失えば政治は混乱に陥る」と強調していた。衆議院ではすでに過半数を失っている与党。木原氏は政治の安定のため、参院選後に野党を取り込む可能性についても言及、連立を呼びかけるには重要な政策で方向性が一致していることが条件になると語っていた。しかし、参院選で自民党は敗北。現状、連立入りに前向きな野党は出ていない。石破首相は連立拡大ではなく、政策ごとに野党との協力を模索する方針を示している。木原氏は「双方がやりたいことを実現できるように協議していく」と話した。
自民党と連立を組む公明党も厳しい状況に置かれていて、今回の選挙で獲得した議席は過去最少となった。かつて政権から転落したときも自民党との協力関係を保ち続けた公明党。斉藤代表は「この選挙が終わっても自公の枠組みは揺るぎないものだと思っている」としていて、「自公政権に突きつけられた選挙結果を謙虚に受け止める必要がある」と話した。
スタジオでは日本政治が専門の牧原出氏と政治部の小嶋記者と伝える。石破首相は過半数を目標としていたが結果は過半数を割り込んだ。続投については自民党内で賛否両論だという。牧原氏は「自公という枠では語れない、新しい日本政治の大きな転換点。3年後の参議院選挙はもっと高いハードル。今後6年~9年は自公少数派になる。特に自民党内で保守派が参政党などに流れている。大きな政治の地殻変動が起こっている」とした。
石破政権は去年衆議院で少数与党となって以降、制作テーマごとにそれぞれと合意をして国会運営を乗り切ってきた。こうした中で石破首相は「新たな政治のあり方」を目指すとしている。小嶋記者は「先の通常国会と同じやり方になると思う。ただ、参議院でも過半数を割ったので、野党側の要求がさらに高くなることも想定される」とした。牧原氏は「“準連立”という間の形の協力関係があるんじゃないか。先の国会よりも大きな枠組みで定期的に協議しながら方向を打ち出すことを考えていくと思われる」とした。
今回の参院選を政権交代に向けたステップと位置づけていた立憲民主党。大串博志選挙対策委員長は各地の選挙情勢に手応えを感じ、自民党に代わる政権を打ち立てる戦略を描いていた。立憲民主党は他の野党の協力を得ることができるのか。去年は衆院選で与党を過半数割れに追い込んだが、総理大臣の氏名選挙で野党全体をまとめきれなかった。参院選後は野党で結束し自公政権に対峙していきたいと考えていたが、今回獲得したのは22議席で改選前から議席を増やすことはできなかった。他の野党との協力が見通せない中、大串氏は「政策で一致できるテーマから議論を始めたい」と話した。
国民民主党は大きく議席を増やした。カギとなるのは政権与党との向き合い方。去年は年収の壁の引き上げやガソリン税の暫定税率廃止で与党と合意。補正予算案に賛成したが、合意はいまだ果たされていないと批判を強めている。石破首相が野党に協力を呼びかける中、国民民主党はどう動くのか。
日本維新の会の動向も注目される。日本維新の会は教育無償化や社会保障改革で与党と合意し予算案に賛成した。岩谷良平幹事長は「どの政党に対しても是々非々の姿勢を貫きたい」としている。
参政党は大きく議席を伸ばし存在感を高めた。SNSを中心に急速に支持を拡大させた。与野党の構図の中で参政党はどのような立ち位置をとろうとしているのか。神谷宗幣代表は「小政党がいくつも生まれながら連立を組んでいく形に数年でなっていくのでは。わが党も特色を明確にしながら影響力ある議席をとっていきたい」と話した。
野党の構図はどう変わっていくのか。比例での各得票数で、今回野党で一番多かったのは国民民主党、次いで参政党、立憲民主党となった。小嶋記者は「野党の中で主導権がどうなっていくかがポイントになる。これまで野党第一党の立憲民主党が調整役を担っていて、この役割は変わらないと思うが、今回の選挙で国民民主党と参政党が多く票を得たことで、立憲民主党が他の野党により配慮せざるを得なくなる場面も想定される」とした。参政党については、「参議院では法案を提出できる11人を上回った。参議院を中心に一定の存在感を示すということもありそう」とした。牧原氏は「自民党から離れた保守層が国民民主からさらに参政党に流れた。SNSで新しく政治に感心を持った層がいて、去年の都知事選以降の選挙はどれも投票率が上がっている。そうした中で新党ブームといえるくらい、様々な党が出ている。いまの政治の枠組みに対して新しい風を吹かせたいという期待があり、既成政党は動画サイトなどで応えられておらずストーリーがない。参政党の“日本人ファースト”はひとつのストーリーに見えるが、法案提出となると政策知識がいる。神谷さんの応対を見ていても参政党は政策への準備が足りない。地道に法案準備をして審議に入る、法律を作るなら他党との連携も必要で国会活動にしっかり取り組めるかがカギ」とした。
政治状況の変化が暮らしにどんな意味を持つのか。出口調査の結果では一番の関心事は物価高・経済。選挙期間中、政権与党は給付金を訴え、野党は消費減税などを訴えてきた。小嶋記者は「減税や廃止は各野党が訴えているが、考えに大きく隔たりがあり調整が必要。ただ、ガソリン税の暫定税率廃止は成立の可能性がある。この場合、現場や消費者が混乱しない対策を野党側に求められる」とした。牧原氏は「SNSが盛んになり、新型コロナなど様々な問題が出てくると多党制も決められる可能性がある。野党も今はかなり政策に責任をもって一定の判断をしようとしている。長期的な問題を考える枠組みをどのように作るか、野党が真剣に考える時がきている」とした。