- 出演者
- 桑子真帆
オープニング映像。
- キーワード
- 日本食肉市場卸売協会
猛烈な暑さが豚の生育に大きな影響を及ぼしている。豚は脂肪が多く汗をかいて体温を下げることができないため、暑さが大きなストレスになる。養豚場では送風機を増設するなどの対策をしているが、気温の上昇に追いついていないという。毎週20頭の豚を出荷しているが、先月は半分に激減。市場に出すことができた豚の重量も通常より10キロほど減少していた。出荷量の減少は全国の養豚場で起きている。去年の残暑で豚の妊娠率が低下し出産の数が減少。さらに、生まれた豚もことしの猛暑でエサを食べず成長が遅れ、出荷が大きく減った。今後10年間の平均的な暑さが豚の成長に与える影響を予測。影響が出る地域は徐々に拡大していく。
さらに広い範囲でリスクが示されたのが乳牛だ。北海道を除くほとんどの地域で生乳の量が10%以上減るという予測になった。愛知・田原では今年の夏、獣医師が酪農家からの依頼で牛の診療に追われていた。暑さで免疫力が低下、乳房炎にかかり搾乳できる量が減っていた。別の農場では高齢の乳牛が自ら立つことができなくなっていた。家畜の診療所では最新の暑さ対策の情報を集め、チームで共有している。定期的に生産者のもとを訪ね、体を冷やす方法など対策をアドバイスしている。未来の環境を人工的に作り、実際に農作物を栽培する研究では、何も対策をせず温暖化が進んだ場合に成長が早くなることがわかった。作物自体は大きくなるが、コメの量は減少する傾向にある。コシヒカリの場合、収穫量は4割以上減少するという。さらに、採れたコメの半分ほどが未熟で品質が低いものになった。野菜ではすでに気候変動の影響が価格に現れているという。近年、東京・大田市場では夏場に入荷量が減少しているという。生鮮食品の価格はこの10年で約4割上昇。それ以外の物価と比べても上がり方が極まっている。
全国で報告された暑さの農作物への影響を紹介。暑さを避けるための技術として作付け時期をずらすことや遮光ネット、暑さに耐える技術として高温耐性品種などが開発されている。温暖化対策をしなかった場合、品種の低い白未熟粒が増えていって、2100年には40%に達成すると予測されている。世界各地でも温暖化の影響が出ていて、輸入にばかり頼るわけにもいかない。
淡路島にある研究施設では今、乳牛の暑さ対策として全国に先駆けた研究を進めている。淡路島でも熱中症や食欲不振になる牛が増えているという。熱帯に位置するカリブ海の島には暑さに強い牛が暮らしている。この牛と一般的な乳牛を交配させ世代交代を繰り返して生まれたのがスリック牛。4年前から人工授精に着手し、これまで9頭誕生させている。一般的な乳牛に比べ、毛の長さは半分ほどで体温調節がしやすい。牛乳の品質は変わらず、乳量の減り方が抑えられている。
みかんの収穫量全国2位の静岡県はシミュレーションによれば今後、みかんの栽培の適温を超える場所が沿岸部の栽培が盛んな場所に広がると予測されている。みかんは暑くなりすぎると日焼けしたりして市場に出荷できなくなる。そんな中、新たに期待がかけられているのが熱帯地域で栽培されているアボカド。今年度から静岡県が1760万円の予算を投じ、アボカドの産地化プロジェクトを始めた。シミュレーションではアボカドの生産に適した場所が広がっていくと予測された。現在、県は8軒の農家と栽培方法を模索している。
温暖化をいかした農作物づくりは全国的広がりを見せている。新たな農作物の生産には「栽培方法の知見がなく安定生産には時間がかかる」「栽培に成功しても需要が低く普及につながらない」といった課題がある。