- 出演者
- 星麻琴 三牧聖子
ICC元裁判官のナビ・ピレイ氏がノーベル平和賞に選ばれた。その直後にはトランプ政権はICCに前代未聞の制裁を発表し、ICC解体にまで言及した。国際秩序が揺らぐいま、世界がどんな選択をするのかに迫っていく。
トランプ政権によるICCへの制裁は金融取引の原則禁止(アメリカ経由)、ICCの資産凍結(アメリカ国内)などとなっている。先月22日、国連総会でトランプ大統領はICCを厳しく批判した。ICCは戦争犯罪や人道に対する罪、集団殺害犯罪や侵略犯罪、指導者などを裁く国際機関。先月にはフィリピンのドゥテルテ前大統領が出廷し、違法薬物を売買した容疑者の殺害を指導した疑いなどで訴追されている。ICCには現在125の国と地域が加盟しているがアメリカ・ロシア・中国などは加盟していない。トランプ政権の元高官であるフレッド・フライツ氏が取材に応じた。フライツ氏はアフガニスタンで米兵の戦争犯罪の捜査をICCが承認したことが始まりで、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が出されたことでアメリカはICCが国家主権を脅かすようになったと捉えているという。去年公表された国家安全保障戦略では国家主権の優位性を繰り返し主張し、国際機関介入に反対の姿勢を示している。ICCが設立された24年前には旧ユーゴスラビアの紛争やルワンダでの虐殺などを受け、国際社会では戦争犯罪を裁く常設機関が必要だとの声が高まっていた。元ICC裁判官の尾崎は設立にも関わっており、安保理常任理事国自ら侵略をし、自ら戦争犯罪をするといったことは設立当時から想定しておらず、ICCには強制捜査権限がないため逮捕状を出しても執行することが難しく、微妙なバランス上にできていた裁判所がいま崩れかかってきているという印象があるなどと伝えた。
ICCの真価が試されている現場がベネズエラであり、今年1月にトランプ政権は違法薬物で国民が傷つけられたとして軍事作戦を行い、マドゥーロ大統領を拘束した。ベネズエラ政府から弾圧されアメリカで亡命生活しているコリーナは、力で居座る体制は力で追い出さなければ追い出せないなどと告げた。しかしマドゥーロ政権の幹部や治安機関がいまなお権力を持ち続けており、ICCは人道に対する罪に対して捜査を続けていて、コリーナは自らの考えを改め、弾圧の証言や証拠を集めてICCに提出している。赤根所長はICCは世界における法支配の最後の砦であり、被害者たちにとって最後の希望の光などと告げた。
同志社大学大学院教授の三牧聖子が登場。トランプ政権はICCに対して非加盟国の国民がなぜICCに裁かれるのか、政治的な意図があると批判して制裁している。三牧はICCが該当国が裁けない場合のみ捜査・裁判を行っており、政治的意図がないからこそプーチンやネタニヤフに現状逮捕状が出ているなどと解説した。ICCをトランプ政権が解体できるかについて三牧は、解体することは難しく、主張の意味するところはアメリカの金融・情報ネットワークを遮断してICCが捜査や裁判ができなくなるという機能不全に陥らせることが狙いなどと説明した。ICCへのトランプ政権の制裁について高市総理大臣は自身のSNSにて深く懸念していると投稿している。日本を含む8カ国の代表も遺憾であり強く反対すると表明している。トランプ大統領はICC加盟国に対して直ちに脱退せよと声明しており、世界で揺らぎが発生している。
ナウル共和国のデイビッド・アデアン大統領はICC脱退を国連総会で表明した。ICC脱退へ動き出したのはナウル含めた6カ国で、コロンビアの動向に注目が集まっている。国際法学者のカロリナは今年12月に行われるICC裁判官の選挙に推薦されていたが、先月にコロンビア政府から取り下げられた。半世紀以上に渡る内戦が続いたコロンビアについてICCは検証を続けてきており、現在は国内での責任追及の動きを見守っている。こうした中で今年8月、デラエスプリエジャ大統領が就任し、トランプ大統領との関係強化を掲げている。コロンビアの元上院議員である政治アナリストのアルフレドは、今後コロンビアがICCとの関係を見直すと予想している。コロンビアでは国民の間でもICCへの評価は分かれている。カロリナはICCは大きな役割があるとし、国内の司法制度だけでなく国際的な最後の砦となるのがICCなのだと告げた。
ICCに最も資金を拠出している日本ではいま支援の動きが広まっている。今月、赤根所長経対する制裁に向けてアメリカと協議することなどを政府に求める署名約17万筆が日本政府に提出された。6月にはICCと協力して慶応大学に学術拠点が開設された。フィリップ・オステン教授は国際刑事司法の専門家で赤根智子所長がICC裁判官になる際にもサポートしている。オステン教授はアジアでのネットワークづくりに注力している。ICCへの加盟はアジア太平洋地域では53のうち19にとどまっている。オステン教授は日本・韓国・モンゴルの大学にオンラインでの会議を呼びかけ、ICCへの理解を市民に広げようとしていた。オステン教授は人材育成が必要だと考え、ICCとアメリカの対立をめぐる法律的問題を学生たちと議論している。
ナビ・ピレイ氏がノーベル平和賞を受賞し、ノーベル賞委員会は国際的なルールを攻撃する人たちへの明確なメッセージだとしている。こうしたメッセージをアメリカがどう受け取っているかについて三牧は、トランプ大統領はICCへの圧力を辞めていないが、市民社会ではトランプ大統領のそうした対応が支持されておらず、ICCを理解したうえでの調査では6割以上が加盟すべきだとしており、ICCの存在意義を訴え続けることが大切になるなどと解説した。三牧はアメリカの制裁では業務を継続するための取引を180日間認めており、それまでにICCは活動継続できる体制を整える必要があり、次世代のリーダーたちへの呼びかけも非常に重要になるなどと説明した。今後のICCとアメリカを巡る動きについてICCでは11月末に締約国会議を開き、来年3月に任期満了となる。アメリカでは11月3日に中間選挙を迎え、2029年1月に任期満了となる。三牧はトランプ政権はICCへの圧力を強めていく可能性が高いため国際社会は最悪のシナリオに備えて、中間選挙後にどうなろうともICCをしっかり支えられるだけの準備を行うべきなどと告げた。
