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オープニング映像。
「遺体を焼くことは死者の尊厳を傷つける行為」とイスラム教徒は土葬を望んでいる。だが日本は99.97%が火葬となっており願いは簡単には叶わなかった。大分・別府市で街を歩くのはインバウンド客だけではなかった。大分県は110の国と地域の学生が通う立命館アジア太平洋大学があり、人口10万人当たりの留学生数は京都・東京の次に多い。パキスタン生まれのザファー・サイードは25年前、APUの1期生として日本にやって来た。中古車を売買する会社で働きながら、パキスタンカレー店のオーナーも務めている。パキスタン出身の妻と日本人女性のパートナー・2人の子どもと共に別府で暮らしており、15年前日本国籍を取得した。別府市の隣の日出町で別府ムスリム教会は町内の土地を買い、6年前に土蔵墓地を作ろうとしていた。計画から2年、山の上にある街の土地だったらどうかと住民が提案し教会も同意した。すると今度は隣の杵築市から反対の声が。日出町の住民と別府ムスリム教会は協定を締結し「1年に1度の水質検査」「墓地の拡張はしない」などの内容で合意した。かつて土葬は日本でも一般的で、現在も土葬を禁止する法律はない。町は条例にも適合しているという考えで「国内の土葬墓地で問題が起きていない」「予定地の隣の修道院では30年以上前から土葬」「水源は予定地から550m WHOの基準をクリア」という理由から汚染の恐れはないとしていた。去年8月、反対派の町議・安部徹也氏が町長選で勝利した。2ヵ月後安部町長はモスクを訪問し”町有地は売らない”と伝えられた。
イスラム教徒が断食をするラマダンの1か月は日の出から日没まで水も飲めない。断食は空腹に耐えることで恵まれない人たちを思いやり平和に感謝する神聖な行動である。礼拝は1日に5回で金曜日は聖なる日とされていて、モスクに来て祈ることが勧められている。サイードさんが営むカレー屋にやって来た。ラマダン中はモスクで夕食を提供しており、週に5日で店が費用を負担している。お互いに助け合うことはイスラム教の教えであり、徳を積むことで亡くなった後は神からの恩恵があると信じられている。モスクでの夜ご飯は国籍や信仰を問わず、誰でも入ることができる。日本には今10か所ほどイスラム教のど層墓地があり、山梨・甲州市の文殊院は仏教霊園の一角をイスラム土葬墓地として開放している。渡邉好美の夫はイラン出身でそこに眠っているという。この地域では古くからイスラム教徒との交流があり、それが土葬の受け入れにつながったという。
宮城県の村井知事は土葬ができる墓地を作ろうと検討している。日本のイスラム教徒は推計35万人で土葬墓地の必要性を専門家は指摘した。国は私たちの取材に対し「それぞれの自治体が責任を持って調整してほしい」「土葬墓地を整備するかしないか国としてコメントはしない」と答えた。サイードさんは初めての息子を14年前に流産し、遺体は別府市のカトリック墓地に土葬されていた。自分の墓の未来は何も決まっていない。
エンディング映像。