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オープニング映像。
数十年かけて育てた木を一気に切ってしまう「皆伐」を行うと、跡地には切り株が残り、腐ると空洞になる。すると、土砂崩れが起きやすくなるという。また、皆伐には重機が必要で、山中へ搬入するのに道が必要となる。その道が崩れることで、土砂崩れの被害は悪化するとされる。20年7月に発生し、67人が死亡した熊本豪雨災害では皆伐された森の下にあった集落も被害を受けた。林野庁によると、皆伐後、7割は放置され、新たな問題が生じるという。
皆伐後、跡地の多くは放置され、動物たちが生息するゾーンは拡大し里まで出てくる動物もいる。植林したとしてもシカに食べられてしまうという。他にも、広葉樹などが次々と枯れる「ナラ枯れ」も起きていて、倒木による死傷者、交通事故も発生している。京都府森林技術センターの小林正秀氏曰く、キノコが生えている木は「ナラ枯れ」のサインだといい、樹皮が容易にめくれた。
カシノナガキクイムシは弱った木を見つけると、数匹が入り込み、フェロモンで仲間を呼び寄せる。人海戦術で幹に大量の穴を開け、病原菌を運び込む。感染した木は水を吸収できなくなり、枯れる。また、幹の中で繁殖し、成虫となったカシノナガキクイムシは被害を拡大させる。そこで、小林氏はペットボトルを使った捕獲器を幹に吊らした。視力の弱いカシノナガキクイムシは捕獲器の中に入り、歩くのも苦手なのでボトルの下部へと滑り落ちていく。フェロモンを出せば、仲間たちも続々と捕獲器に集まってくるという。伐採には1本で約25万円だが、捕獲器は1本に3セットで2万5000円。ただ、装置のメンテナンスが必要だという。
小林氏の取り組みは注目され、杉並区にある栗園の農家を訪れた。虫が入った形跡のある木を中心に幹にシートを巻き、捕獲器も設置した。國學院大學久我山高校では捕獲器を回収したところ、4万匹を超えるカシノナガキクイムシが確認された。
1960年代からのエネルギー革命で、木材はエネルギーとして使われなくなり、広葉樹は放置された。木の弱体化で、ナラ枯れも増えたという。地球温暖化により、カシノナガキクイムシが活動する期間も増えてしまっている。23年10月、北海道でナラ枯れの被害が初めて確認された。ヨーロッパから輸入した最新機材を使っている柴田産業は皆伐を行っているが、山が緩やかなため、土砂崩れのリスクは小さいといい、植林もしている。給料は業界平均を上回っている。
黒田木材商事は伐採から加工、販売まで行い、木は植え直すことで後輩たちの仕事にも繋がるという。また、自然と触れ合える林業に惹かれ、仕事として選択する若者が増えているという。スノーボーダーの女性は競技を通して自然環境の変化を敏感に感じ、持続可能な森づくりは環境保全に繋がると林業の世界に飛び込んだ。小林氏は「農業、林業をする人は国土を守っていると言えるのだから、国から給料が出たらいい」と提言し、林業の地位向上を訴えた。
高濱宏至氏のNPO法人ではナラ枯れした木材を炭にし、粉末状にするなど加工して蓄電器をつくった。すでに実用化もされ、最大で7年間も使われているという。リチウムイオン電池よりもかさばるが、メンテナンスは不要で、電気柵、監視カメラへの応用も可能だという。京都大学の山極壽一名誉教授は「日本の古代の知を利用し、科学技術を賢く入れながら環境にやさしい暮らしをデザインする。行政、自治体、NGO、企業、学者らが知恵を寄せ集め、未来をつくっていくのがこれからの時代」と語った。
エンディング映像。